真菌(カビ)とは?細菌・ウイルスとの違いやリスク、対処法についても解説

家の中でカビが急に増えて困っていませんか?
「カビ=真菌」という言葉を聞いたことがあっても、その正体や細菌・ウイルスとの違いがよくわからない方も多いでしょう。
真菌(しんきん)は、私たちの身の回りに普通に存在している微生物です。
しかし、条件が整うと急激に増えて、健康被害や建物の劣化を引き起こす厄介な存在でもあります。
この記事では、真菌(カビ)の基本的な知識から実践的な対処法まで、わかりやすく解説します。
カビの悩みを解決し、快適で安全な住環境を取り戻すためにも、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
1.真菌(カビ)とは?
真菌(しんきん)は「菌類」と呼ばれる微生物のグループで、カビのほかにきのこや酵母(こうぼ)も含まれます。
動物や植物とも細菌とも異なる、独立した生物のグループです。
真菌は、細胞の中に核(かく)という重要な部分を持っている「真核生物(しんかくせいぶつ)」に分類されます。
この点では人間と同じですが、植物のように細胞壁という硬い壁で細胞が覆われているのが特徴です。
そして、家庭内で問題になるのは主に「カビ」の仲間です。
カビは湿気やホコリがある環境で、胞子という種のようなものを空気中に飛ばして繁殖します。
この胞子が別の場所に付着すると、そこで新たなカビが成長しはじめるのです。
2.真菌(カビ)・細菌・ウイルスの違いとは?
真菌(カビ)と細菌、ウイルスは、どれも私たちの健康に影響を与える可能性がある微生物ですが、それぞれまったく異なる性質を持っています。
主な違いは以下の3つのポイントです。
- 性質・構造
- 感染経路
- 人体への影響
これらの違いを理解することで、それぞれに適した対策を取ることができます。
違い1.性質・構造
分類 | 生物分類 | 構造 | 栄養・代謝・増殖 |
真菌 | 真核生物(細胞核あり) | 単細胞(酵母)または多細胞(カビ)、細胞壁あり | 自力で栄養を取り込み、代謝して増殖可能 |
細菌 | 原核生物(細胞核なし) | 単細胞、細胞壁あり | 外界の栄養を利用して分裂・増殖する |
ウイルス | 生物ではないとされることもある | DNAまたはRNAとタンパク質の殻のみ | 宿主の細胞に侵入しないと一切活動できない |
真菌と細菌は自力で生きることができますが、真菌は真核(細胞核がある)、細菌は原核(細胞核がない)という構造上の違いがあります。
一方、ウイルスは細胞を持たず、生物ではないとする考え方もあり、ほかの生物に寄生しないと存在できません。
真菌(カビ)は植物のように細胞壁を持ちながら、動物のように細胞核があるという特殊な構造をしています。
これにより、ほかの微生物とは性質や増殖の仕方が異なるのです。
違い2.感染経路
分類 | 感染経路の特徴 |
真菌 | 胞子が空気中に飛び、皮膚・粘膜・肺などに入り込んで感染する |
細菌 | 口・鼻・傷口などから体内に入り、体内で自力で分裂・増殖する |
ウイルス | 細胞内に入り、細胞の仕組みを使って自己を複製しながら感染を広げる |
真菌は胞子が空気に漂って吸入や接触で感染し、細菌は体の傷や粘膜から侵入して増える性質を持っているのが特徴です。
一方、ウイルスは細胞の中に入って自らのコピーを作り続けるという寄生的な性質を持っています。
特に真菌の胞子は小さく軽いため、風に乗って遠くまで運ばれます。
そのため、カビが生えた場所から離れていても、知らないうちに胞子を吸い込んでしまうことがあるため注意が必要です。
違い3.人体への影響
分類 | 主な症状・影響 |
真菌 | カビの胞子によるアレルギー、皮膚炎、水虫、カンジダ症。免疫低下で肺真菌症など重症化することもある |
細菌 | 食中毒、肺炎、尿路感染症などが典型。化膿や発熱などの炎症反応が出やすい |
ウイルス | インフルエンザ、新型コロナ、ノロウイルスなど。発熱・咳・嘔吐など多様な症状。後遺症や重症化もある |
真菌はアレルギーや慢性的な皮膚症状を引き起こし、免疫力が低下した人では深刻な病気になることもあります。
細菌は炎症や発熱を中心とした急性感染が多く、ウイルスは短期的な急性症状から重症化・後遺症まで幅広く複雑な影響を及ぼします。
特に真菌による健康被害は、症状が慢性的に続きやすく、原因がカビだと気づかないまま体調不良が長引くケースも少なくありません。
3.真菌(カビ)が発生しやすい条件
真菌(カビ)の発生を防ぐには、以下の3つの条件を改善することが重要です。
- 通気性が悪い
- 温度差が発生しやすい
- 日当たりが悪い
どれか1つでも取り除くことができれば、カビの繁殖を抑えることができます。
条件1.通気性が悪い
空気がこもることで湿気が逃げにくくなり、真菌にとって理想的な繁殖環境が整ってしまいます。
特に押し入れ、クローゼット、家具の裏側など、風通しの悪い場所は要注意です。
これらの場所では、湿度が70%以上の状態が続きやすくなります。
衣類や布団が湿気を含みやすく、カビ臭や変色の原因にもなります。
また、壁際に家具をぴったりと付けて置いている場合、壁と家具の間に空気の流れができず、結露やカビが発生しやすいです。
定期的に家具を動かして風を通すか、壁から少し離して設置することが大切です。
条件2.温度差が発生しやすい
室温が20〜30℃前後になると、真菌がもっとも活発に繁殖しやすくなります。
特に家電の裏、浴室、台所など、埃や皮脂、生ごみ、湿気がたまりやすい場所は注意が必要です。
エアコンの内部や冷蔵庫の背面などは、内部の結露と埃でカビの温床になりやすい場所です。
これらの機器は定期的な清掃やメンテナンスが欠かせません。
また、洗濯機の内部も湿気と適度な温度でカビが繁殖しやすい環境です。
使用後は蓋を開けて乾燥させる、定期的に槽洗浄を行うなどの対策が効果的です。
条件3.日当たりが悪い
日光が当たらないことで湿気が乾きにくく、真菌が長期間残留しやすくなります。
北向きの部屋、窓のない玄関、トイレ、納戸などが典型的なリスクの高い場所です。
日照不足により室内が暖まらず、湿度が高くなることも要因の1つです。
窓枠や壁面に付いた水滴は、カビの栄養源となってしまいます。
日当たりの悪い場所では、除湿器の使用や定期的な換気、照明を活用した乾燥対策が重要になります。
また、除湿剤を設置するなど、湿気対策を重点的に行いましょう。
4.真菌(カビ)を放置することで起こるリスク
真菌(カビ)を発見しても「まだ小さいから大丈夫」「そのうち何とかしよう」と放置してしまう方は少なくありません。
しかし、カビの放置は以下のような深刻なリスクを引き起こします。
- 健康被害
- 建物や家具の劣化
- 対処コストの増加
早めの対応が何よりも重要です。
リスク1.健康被害
真菌の胞子が空気中に漂い、吸い込むことでアレルギーや喘息の原因になってしまいます。
皮膚に接触すれば皮膚炎、水虫、カンジダ症などの真菌感染症を引き起こすこともあります。
特に小さな子ども、高齢者、免疫力が弱い人は重症化しやすく注意が必要です。
免疫力が低下している人では、肺の奥まで真菌が侵入して深刻な肺炎を起こすケースもあります。
また、カビによって室内の空気の質が悪くなり、倦怠感、咳、鼻炎、頭痛などの不調を招くこともあります。
「何となく体調が悪い」「家にいると調子が悪い」という症状が続く場合、カビが原因の可能性もあるのです。
リスク2.建物や家具の劣化
真菌を放置して劣化が進むと、壁紙の張り替えや建材の補修といった大掛かりな修繕が必要になります。
カビは建材の奥深くまで菌糸を伸ばし、構造材まで腐らせてしまうことがあります。
湿気とカビによって、シロアリや害虫被害につながることもあります。
木材が腐朽すると、建物の耐震性や安全性にも影響を与えかねません。
特に賃貸物件の場合、カビの放置は退去時のトラブルの原因となり、高額な修繕費用を請求されるリスクがあります。
入居者の管理不備と判断されれば、敷金の返還が受けられない場合もあります。
リスク3.対処コストの増加
真菌を放置すると菌核、菌糸、胞子が素材の奥まで入り込み、表面的な清掃だけでは除去できなくなります。
床材、壁紙、断熱材などに広がると、張り替えや一部解体が必要になることもあります。
広範囲にカビが拡がった場合、専門業者による除去作業、防カビ処理、再発防止対策のセットが必要になり、費用が高額になりやすいです。
被害が広範囲になると、家具や家電の買い替えが発生する可能性もあります。
結果的に、早期対応なら数万円で済んだものが、放置により数十万円から数百万円のコストがかかるケースも珍しくありません。
「早期発見・早期対応」がコスト面でもっとも有効な対策です。
5.真菌(カビ)を除去・予防するための対処法と流れ
真菌(カビ)の対処は、正しい手順で進めることが重要です。
間違った方法で対応すると、かえって被害を拡大させたり、健康リスクを高めたりする可能性があります。
適切な流れに沿って対処できれば、安全かつカビ問題を解決できます。
- 真菌(カビ)の程度を確認する
- 換気循環を促す
- 管理会社・専門業者に相談する
以下で詳しく見ていきましょう。
流れ1.真菌(カビ)の程度を確認する
まずは真菌の範囲、色、ニオイを確認し、軽度なものか重度なものかを見極めることが重要です。
目で見える範囲だけに発生しているのか、壁の裏や床下にも及んでいるのかをチェックしましょう。
表面にうっすらと付いている程度なら軽度、黒い斑点が広がっていたり、カビ臭がしたりする場合は重度の可能性があります。
また、複数の場所に同時に発生している場合も、建物全体の問題として考える必要があります。
家族に体調不良や咳、頭痛などの症状がある場合は、見えない場所にもカビが広がっているかもしれません。
このような場合は、自己判断せずに専門家への相談をおすすめします。
流れ2.換気循環を促す
真菌を抑えるには、空気中の湿気を逃すことが基本中の基本です。
窓を2ヶ所以上開けて風の通り道を作り、室内の空気を入れ替えましょう。
可能であれば対角線上にある窓を開けると、効果の高い風の流れを作ることができます。
天気の良い日は長時間換気を行い、湿度を下げることが大切です。
また、扇風機やサーキュレーターを使って空気の流れを作ることも効果的です。
特にクローゼットや押し入れなど、自然な空気の流れが少ない場所では積極的に換気を行いましょう。
流れ3.管理会社・専門業者に相談する
賃貸物件の場合、真菌を発見したらすぐに管理会社や大家さんへ連絡することが重要です。
自分で除去しようとせず、現状の写真を撮って記録し、状況を正確に報告しましょう。
建物の構造的な問題や、隣接する部屋からの影響でカビが発生している場合もあります。
このような場合は、個人での対応では根本的な解決が困難です。
持ち家の場合でも、広範囲のカビや繰り返し発生するカビについては、専門業者への相談をおすすめします。
適切な診断と対処法のアドバイスを受ければ、確実な解決につながります。
6.真菌(カビ)に関するよくある質問
ここでは、特によく寄せられる以下の質問について回答します。
- カビ取り剤や塩素系漂白剤でカビは取れる?
- 市販の空気清浄機や除湿器でカビ対策は十分?
- カビが再発するのはなぜ?
ぜひ参考にしてください。
よくある質問1.カビ取り剤や塩素系漂白剤でカビは取れる?
市販のカビ取り剤や塩素系漂白剤では、壁や天井の内部に浸透したカビの菌核、菌糸、胞子までは除去できないことが多いです。
表面的にはきれいになったように見えても、内部にカビが残っていることがあります。
これらの製品は漂白する効果はありますが、根本的な解決にはならない場合があります。
また、使用方法を間違えると健康被害のリスクを引き起こしかねません。
重度のカビや繰り返し発生するカビの場合は、専門業者による根本的な対応が必要です。
素材の奥まで入り込んだカビには、専用の薬剤を使った除去作業が効果的です。
よくある質問2.市販の空気清浄機や除湿器でカビ対策は十分?
真菌に対する空気清浄機や除湿器は、あくまで「補助的な対策」として考えるべきです。
カビの発生源が壁の裏や床下、空調内部にある場合は、表面の空気をきれいにしても再発を防ぐことはできません。
これらの機器は、空気中に浮遊している胞子を除去したり、湿度を下げたりする効果はあります。
しかし、すでに発生しているカビそのものを除去する力はないため、発生源への物理的なアプローチ(清掃、除菌、環境改善)が本質的な対策となります。
機器による対策と併せて、根本的な原因の除去を行うことが重要です。
よくある質問3.カビが再発するのはなぜ?
カビが再発するのは、表面だけを拭き取っても、素材の内部や空気中に真菌の胞子が残っているためです。
湿気や温度などの条件が整うと、数日から数週間で再発するケースがよくあります。
カビは菌糸を建材の奥深くまで伸ばすため、見た目には除去できたように見えても、実際には根っこの部分が残っていることがあります。
また、一度カビが発生した場所は、胞子が付着しやすい環境です。
再発防止には「根本的な除去と環境改善(換気・除湿)」が不可欠です。
カビが好む条件を取り除かない限り、何度でも同じ場所に発生してしまうのです。
7.真菌(カビ)の除去に困ったら専門業者に相談しましょう
真菌(カビ)は、適切な知識と対策があれば予防や除去が可能です。
しかし、広範囲に発生したカビや繰り返し再発するカビを個人で対応するには限界があります。
無理に自分で対処しようとすると、かえって健康被害や建物の損傷を拡大させてしまいかねません。
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カビでお困りの際は、一人で悩まずにお気軽にご相談ください。