住宅やホテル、病院、施設などで「なんとなくカビ臭い」「芳香剤を置くと変な混ざった臭いになる」「雨の日だけ室内の空気が重い」とお困りではないでしょうか。
清掃や換気をしても改善せず、空気質測定(IAQ)を行っても数値に異常が見られない場合、原因は「MVOC」かもしれません。
今回は、目に見えないニオイの正体の一つであるMVOCの概要から発生原因、リスクや対策方法まで解説します。
原因不明のカビ臭や生活臭の正体を特定し、改善するための参考にしてください。
目次
1.MVOCとは?
まず、悪臭の原因となり得る「MVOC」について、概要やMVOCの発生源になる環境の特徴について解説します。
それぞれ参考にしてください。
カビや細菌など微生物の代謝活動で発生する低分子有機ガスのこと
MVOC(Microbial Volatile Organic Compounds)とは、カビや細菌などの微生物が増殖し、代謝活動を行う過程で放出される揮発性有機化合物の総称です。
建材や内装材から発生する通常のVOC(Volatile Organic Compounds)とは異なり、微生物が有機物を分解する際に生成されるため、以下のような多種多様な成分を含みます。
- 硫化水素
- 揮発性脂肪酸
- アミン類
- アルデヒド類 など
私たちが普段感じる独特の「カビ臭さ」や「土臭さ」は、それぞれの物質が複雑に混ざり合って生じると考えられています。
微生物の種類や生育環境によって発生する化学物質の種類や量が変化するため、ニオイの質も環境によって異なるのです。
MVOCの発生源になる環境の特徴
MVOCは、微生物が繁殖するための栄養(有機物など)や湿度、温度がそろった場所であればどこでも発生する可能性のあるガスです。
「ダンプビルディング(湿気のある建物)」と呼ばれる環境では、微生物汚染が広がりやすく、MVOC発生のリスクが高まります。
主な発生源としては、以下のとおりです。
- 壁の内部
- 床下
- 天井裏
- エアコンの内部 など
例えば、水害による床上・床下浸水が発生した家屋では、泥水に含まれる有機物や水分が建材に残り、時間が経つにつれてカビや細菌が繁殖し、強烈なニオイの原因となります。
また、日常的に目に触れない場所で結露や漏水が起こると、建材が湿った状態になり、微生物繁殖の温床になります。
IAQ(室内空気質)モニタリングで検出できない理由
MVOCは生物由来の臭気であり、国内で販売されている一般的なIAQ(室内空気質)モニタリングでは検出できません。
IAQで測定できるのは二酸化炭素・一酸化炭素・浮遊粉じんなどであり、MVOCは捉えられないためです。
MVOCは、低濃度でも強いニオイとして感知される特徴があります。
そのため、厚生労働省が定めるTVOCの暫定目標値を下回る環境でも、不快臭やシックハウス症候群、アレルギー疾患の症状の原因となる場合があります。
人間の嗅覚は特定のカビ臭に対して敏感であるため、測定機器の数値上は「問題なし」であっても、実際には居住者が不快感のあるケースは少なくありません。
IAQが正常範囲内であっても異臭が続く場合は、MVOCを疑う必要があります。
2.MVOCが発生しやすい場所や環境条件について
MVOCが発生しやすい場所や環境条件は次のとおりです。
- 高湿度・有機物(皮脂やホコリ、汚れなど)が多い場所
- カビ・細菌が繁殖しやすい素材
- 換気が悪く空気を滞留しやすい場所
どのような場所や環境で発生しやすいのか、詳しく見ていきましょう。
(1)高湿度・有機物(皮脂やホコリ、汚れなど)が多い場所
湿度が高く、カビの栄養源となる有機汚れが多い場所は、MVOCが発生しやすい環境です。
微生物が建材や汚れを分解し、揮発性成分を放出することでニオイが強くなります。
代表的な場所は以下のとおりです。
- 窓のない部屋・空間
- エアコン周辺の壁や天井
- 地下室
- 水害後の床下・壁の内側 など
結露しやすい窓際などはも水分が供給され続けるため、微生物の活動が活発です。
また、天井は掃除の頻度が極端に少ないことから、有機物が堆積しやすく、且つ揮発した水分が付着する微生物の活動に最適な場所と言えます。
(2)カビ・細菌が繁殖しやすい素材
建物に使われている素材のなかには、カビ・細菌が繁殖しやすくMVOCの発生源になるものがあります。
これらは水分を内部に吸収・保持する性質を持っており、表面が乾いても内部含水率が長時間高い素材の代表例です。
- 木材
- 石膏ボード
- 断熱材
- 畳 など
特徴としては吸水性が高い、空隙が大きい(多孔質)、水蒸気透過性が低い、親水性などが挙げられます。
素材内部での雑菌の繁殖は除去を困難とし、長期間のMVOC放出の要因となります。
(3)換気が悪く空気を滞留しやすい場所
空気が循環せず滞留しやすい場所では湿度が高い傾向にあり、微生物活動に必要な水分が供給され続けられます。
さらにMVOCの原因となる微生物は物理吸着や毛細管凝縮、化学結合などを通じて臭気物質を内部に保持し、保持された臭気物質は温湿度変化によって吸着物質の脱離が生じ、悪臭が再放散されるのです。
これらのサイクルが長期的な残留臭気の主因と言われています。
主な発生源は以下のとおりです。
- エアコン内部
- 玄関
- 押し入れ
- 納戸
- 家具の裏側 など
特にエアコン内部は結露水やホコリが溜まりやすく、カビが発生すると室内にMVOCが広がります。
押し入れや納戸、家具の裏側など、普段風を通さない場所も見逃しやすいため注意してください。
3.MVOCを放置する3つのリスクとは
MVOCを放置するリスクは、主に以下の3つです。
- 健康被害
- 建物の腐食・劣化
- 企業やブランドイメージの低下
それぞれ詳しく解説します。
影響1.健康被害
MVOCを吸い続けると、シックハウス症候群に似た症状を引き起こすリスクがあります。
具体的な症状としては、以下のとおりです。
- 目や鼻、喉の粘膜の刺激
- 頭痛
- めまい
- 倦怠感
- 喘息のリスク増加 など
なお、MVOCは低濃度でもアレルギー反応を引き起こす場合があります。
特に免疫力が低い高齢者や子どもがいる環境では影響が大きく、不快なニオイによるストレスも健康に悪影響を与えます。
影響2.建物の腐食・劣化
MVOCの発生は、建材の劣化が進行しているサインです。
浸水後に乾燥や除菌が不十分だと、床下の基礎や木部で微生物が繁殖し、衛生環境の悪化と腐朽が進行します。
例えば、湿気を吸った木材やボード類は腐食しやすく、放置すると建物の構造的な強度に影響する恐れがあります。
早期に対策を行わないと、将来的に大規模な修繕工事が必要になり、コストが増大しかねません。
影響3.企業やブランドイメージの低下
MVOCの発生は、企業やブランドイメージの低下につながるリスクもあります。
ホテルや旅館、商業施設などでカビ臭や不快なニオイがする場合、顧客からのクレームに直結し、施設全体の評価を下げる要因になるためです。
オフィスビルにおいても、働く人の集中力低下や、職場環境への不満につながるため、生産性の低下や企業イメージの毀損を招きます。
快適な空間の維持は、建物や施設の資産価値を守ることにも直結するのです。
4.MVOC対策に必要な専門的アプローチについて
MVOC対策に必要な専門的アプローチは、次のとおりです。
- 化学洗浄だけではなく構造的な微生物制御を行う
- IICRC国際規格にて推奨されている薬剤や機材の使用
- 空間構造や素材など多様なロケーションに応じた対処をする
それぞれ参考にしてください。
アプローチ1.化学洗浄だけではなく構造的な微生物制御を行う
MVOCの対策では、化学洗浄だけではなく、構造的な微生物制御を行うアプローチが大切です。
単に薬剤で洗浄するだけでは、微生物を一時的に減らせても、環境条件が整えばすぐに再発してしまいます。
ここで重要なのは、微生物が繁殖するメカニズムに応じた環境要因や原因物の段階的除去を行い、微生物の活動自体を制御することです。
例えば浸水被害後の対応では、以下の工程が必要になります。
- 乾燥工程(微生物活性抑制・吸脱着平衡の脱離誘導)
- 物理除去工程(有機基質・臭気担体の密度削減)
- 化学分解工程(酸化反応・還元反応・中和反応)
- 微生物制御工程(代謝経路の停止・再発防止)
以上を実施することで、「臭気分子(悪臭)・基質(微生物栄養素)・微生物(原因物質)・材料吸着(化学結合)」の4つの発生因子をより高い精度で解消できるのです。
アプローチ2.IICRC国際規格にて推奨されている薬剤や機材の使用と工程設計を行う
MVOC対策では、IICRC国際規格にて推奨されている薬剤や機材を使用し、規格に準拠した工程で処理することが基本です。
IICRC国際規格に準拠した段階的な工程を実行するためには多種多様な薬剤と複数の機材を状況によって使い分けるため、専門知識に基づいた現場評価と判断が欠かせません。
MVOCは有機汚濁負荷、嫌気性微生物代謝、建材内部の吸着・再放散、化学的分解生成物などが複合的に関与します。
単一工程では制御が困難であるため、化学的根拠に基づく工程設計が重要です。
アプローチ3.空間構造や素材など多様なロケーションに応じた対処をする
MVOCの原因の多くは水分量が基準値以上に保持された空間や素材内部で大量発生する微生物です。
例えば微生物の一種であるカビは「湿度:60%以上」、「水分活性(aw):0.80以上」などの環境下で活発になり増殖しやすくなります。
空間や素材などの水分保持メカニズム(毛細管現象や水素結合、静電相互作用、疎水性相互作用など)を理解し、構造物や素材内部に潜むをリスクを評価・対処することが必要です。
目に見えないリスクは蓄積され、気付かない内に被害が拡大していく傾向があります。
5.MVOCを測定・検出する3つの方法
MVOCを測定・検出する方法は、以下のとおりです。
- ガスクロマトグラフィー(GC/MS)による分析
- 臭気センサー・電子ノーズによる測定
- MVOC測定とIAQモニタリングの併用
いずれも測定や検出には費用がかかることが多く、範囲や検出項目によりますが3万円~10万円程度と考えておくとよいでしょう。
方法1.ガスクロマトグラフィー(GC/MS)による分析
ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)は、空気中に含まれる微量成分を分離し、成分ごとに分析できる方法となります。
採取した空気に含まれる化学物質の種類や濃度を高精度で測定でき、MVOCの特定に有効です。
カビ特有の成分(例:2-メチルフラン、3-オクタノンなど)が検出された場合、目に見えない場所でのカビ繁殖も推測できます。
方法2.臭気センサー・電子ノーズによる測定
MVOCをより手軽にリアルタイムで把握したい場合には、半導体ガスセンサーなどを用いた臭気測定が役立ちます。
特定の還元性ガスに反応して電気抵抗が変化する性質を利用し、ニオイの強さを数値化できるのが特徴です。
人間の嗅覚に近い評価が可能であり、換気や脱臭装置の効果をその場で確認するのにも適しています。
連続的に測定できれば、いつ、どのような条件でニオイが強くなるかという変動パターンも把握できます。
方法3.MVOC測定とIAQモニタリングの併用
MVOCの測定とあわせて、二酸化炭素濃度や湿度、粉塵量などの一般的な室内空気質(IAQ)のモニタリングも重要です。
人の在室による二酸化炭素の増加と、喫煙や建材からの汚染物質の増加は必ずしも連動しません。
こうした状況下で、複数の指標を組み合わせて監視できれば空気質の状態をより正確に診断できます。
総合的なモニタリングを行えば、換気不足や湿度過多などMVOC発生の背景にある環境要因を突き止められます。
6.MVOC対策を行うことで得られる4つのメリット
MVOC対策に取り組むことで得られるメリットは、以下のとおりです。
- 臭気トラブルを早期に発見・改善できる
- 健康被害やクレームリスクを軽減できる
- 建物の劣化を防ぎ、コストを削減できる
- 社内・顧客の信頼性向上につながる
それぞれ見ていきましょう。
メリット1.臭気トラブルを早期に発見・改善できる
MVOC測定を行うメリットは、人間の嗅覚や目視では捉えきれない汚染の兆候をいち早く察知できる点にあります。
カビなどの微生物は、目に見えるコロニー(集合体)を形成する前の段階で、既にMVOCを放出しているためです。
私たちが「カビが生えている」と目で見て認識したときには、すでに汚染が進行しきっています。
定期的にMVOC測定を行えば、まだ目に見えない菌糸の成長段階や、壁の裏側などの隠れた場所での繁殖も早期に検知可能です。
早い段階で湿気やカビの兆候に気づければ、大掛かりな修繕工事になる前に、環境要因を抑制する比較的軽微な設備増設などの対策でトラブルを未然に防げます。
メリット2.健康被害やクレームリスクを軽減できる
適切な対策によって室内のMVOC濃度を低減するのは、建物を利用する人の健康を守ることにもつながります。
頭痛やめまい、アレルギーといった健康被害を未然に防ぐ手立てになるからです。
「なんとなく空気が悪い」といった体調不良の訴えであっても、従業員の生産性低下や、テナント・顧客からの重大なクレームに発展しかねません。
科学的な測定にもとづいてMVOCを除去し、安心・安全な空気環境を整備するのは、施設運営上の法的・社会的リスクの管理にも直結します。
メリット3.建物の劣化を防ぎ、コストを削減できる
MVOC測定の対策は、将来的な大規模修繕や建て替えにかかる莫大なコストを削減することにもつながります。
早期に湿気やカビの発生源を特定するのは、適切なメンテナンスを行うきっかけになります。
MVOCが発生している環境には、微生物が活動できるだけの水分と栄養が存在しており、建材が腐食・劣化しやすい状況です。
水害や漏水、日常的な結露の放置も微生物繁殖の原因となるため、内装の全交換など多額の修繕費用を抑えるためにも検討してください。
メリット4.社内・顧客の信頼性向上につながる
空気質を測定しつつ科学的なデータにもとづいて環境を管理するのは、施設の安全性や快適性を客観的に証明する手段にもなります。
MVOC濃度やセンサーによる数値データと、在室者のアンケート結果などを照らし合わせることで、説得力のある環境評価が可能になるからです。
例えば数値上で衛生環境の基準を満たしていると明示できれば、利用者や従業員の不安を払拭でき、逆に数値が高い場合はすぐに対策を打つ根拠になります。
見えない空気を「見える化」し、誠実に対策に取り組む姿勢は、組織としての信頼性やブランド価値の向上につながるのです。
7.MVOC発生後の対処と再発防止策について
もしMVOCが発生してしまったら、再発を防ぐために以下の対処が必要です。
- 乾燥作業
- 物理除去作業
- 化学分解作業
- 微生物制御作業
- 環境モニタリングと再施工による維持管理
それぞれぜひ参考にしてください。
ステップ1.乾燥作業
素材含水率・空間湿度・aw(微生物活性条件)を生育限界域まで低減し、臭気生成と吸着平衡を脱離側へ誘導します。
初期排水、滞留水除去、機材設置、乾燥管理、空間換気なども行います。
ステップ2.物理除去作業
臭気の元となる有機基質・汚泥・吸着物・汚染表層を直接除去し、臭気源密度を削減します。
表層堆積物の除去、陰圧回収、繊維・吸水材の回収、深部抽出洗浄なども行います。
ステップ3.化学分解作業
物理除去で解放された臭気分子そのものを反応分解または塩形成(中和反応)により不活性化させます。
酸化反応(オゾン燻蒸や液剤噴霧)、還元反応、中和反応などを発生させます。
ステップ4.微生物制御作業
臭気再発の温床となる真菌・細菌・放射菌・EPSマトリクスを解体し、代謝系そのものを停止させる。
バイオフィルム(EPS)破砕、空中浮遊担体の強制回収(HEPA)、抗菌・抗真菌処理、好気性環境への誘導なども行います。
ステップ5.環境モニタリングと再施工による維持管理
対策後も湿度や空気質を継続して確認し、環境が安定しているかを監視することが大切です。
センサーを用いて常時監視を行い、もし数値の悪化やニオイ戻りがあった場合は速やかに原因調査を行い、再施工などの処置を行います。
換気設備や脱臭装置を適切に運用・制御するのも、良好な空気質を維持するために有効です。
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ここまで紹介した方法は特殊な機器や方法を用いるため、業者への依頼が必要です。
私たちSpread株式会社は、カビやダニ、花粉、ペットなど微生物由来の臭気対策や火災などの化学物質由来の臭気対策、浮遊微粒子対策を得意としています。
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9.MVOCの対策は信頼できる業者に依頼しましょう
MVOCは、単なる不快なニオイの問題にとどまらず、建物の健康状態や居住者の健康に関わる見逃してはならないサインです。
原因の評価・対処するためには、微生物に関する専門知識と、目に見えない化学物質を測定・分析する技術がなくてはなりません。
原因不明のニオイを根本から解決するためには、信頼できる専門業者への依頼を推奨します。
健全な室内環境を取り戻し、長く快適に過ごせる空間を守るためにも、ぜひSpread株式会社へご相談ください。







