オフィスや管理物件、居住空間で「なんだかカビ臭い」「掃除してもすぐにニオイが戻ってくる」「来訪者や入居者、家族、友人などから空気が悪いと指摘を受けた」といった経験はありませんか?
目に見える汚れは掃除できても、空気中に漂う見えない汚染は、一般的な清掃だけでは解決できないケースがしばしばあります。
そこで重要になるのが「IAQ(室内空気質)」という考え方です。
今回は、建物の衛生環境を守るIAQの基礎知識、からPM2.5やCO₂濃度などの物理的因子、VOCなどの化学的因子、カビや細菌エアロゾルなどの生物学的因子によるリスクと対策を解説していきます。
社内や管理物件、居住空間における空気の質の改善を目指している方は、ぜひ最後までご一読ください。
目次
1.IAQ(室内空気質)とは?
「IAQ(Indoor Air Quality)」とは、室内環境における空気の質が、居住者の健康や快適性に与える影響を評価・管理する概念です。
WHOでは室内空気汚染を以下のように位置づけています。
- 世界的な主要健康リスクの一つ
- 呼吸器疾患や循環器疾患、がんアレルギーの原因
- 子供や高齢者、基礎疾患保有者に特に影響が大きい
これをもとに日本では閾値管理という方法で個別物質ごとの安全基準が法令で定められています。
一見、WHOの考えに即した行動に見えますが、WHOの思想とは異なるということを理解しておく必要があります。
WHOではリスクの最小化(=安全な下限値は存在しないため、合理的に達成可能な限り低く抑える)という思想がベースであるため、常時管理・改善(測定・分析・制御)を推奨しています。
一方、日本は閾値(基準値)を法令ととして定めているため、厳格な管理がされているという認識を持ち、必要な常時管理体制(環境改善)の意義が希薄化し、定期確認による必要応じた対応(衛生維持)となってしまっていると一部から指摘いただくような状況です。
IAQは単に空気が澄んでいるかだけでなく、以下のようなさまざまな要素を総合的に評価します。
そのため、ここではWHOの概念に沿ってそれぞれを細かく解説をしていきます。
以下は日本とWHOの概念の乖離をまとめたものです。
| 項目 | 日本 | WHO |
| 思想 | 規制遵守 静的な基準管理急性症状にフォーカス | 健康リスク最小化 動的なリスク管理慢性影響・長期曝露リスク重視 |
| 指標 | VOC中心 現時点の科学的毒性評価ベースシックハウス問題が原点 | 粒子+ガス+生物 汚染物質の範囲が広い特に粒子系・燃焼系範囲が異なる |
| 評価 | 閾値超過 基準値以下を安全とする環境の衛生維持重視 | 曝露量 可能な限り低減させ続ける健康リスクの低減量重視 |
| 運用 | 点検型 年数回の定期確認基準値超過部分の瞬間改善 | 継続管理型 常時モニタリングデータドリブンな運用改善 |
| 対策 | 回数 改善行動記録の管理低減に直結する行動の実行徹底 | 効果 結果のサンプリング最適化(配置・能力設計)の追求 |
人は1日の大半を建物の中で過ごすため、室内の空気環境は私たちの健康や快適性に直結します。
IAQを適切に管理することは、室内空間における集中力や生産性の向上にもつながります。
2.IAQを評価する主な5つの指標・基準値
IAQを評価する主な指標・基準値は、以下のとおりです。
- CO₂(二酸化炭素)
- PM2.5(微小微粒子状物質)
- TVOC(総揮発性有機化合物)
- 温度・湿度
それぞれ参考にしてください。
指標1.CO₂(二酸化炭素)
室内の二酸化炭素濃度は、人由来汚染の蓄積度であり、換気制御のトリガーとして使用される指標です。
人の呼吸によってCO₂が増えるため、IAQの二酸化炭素(CO₂濃度)は「換気が十分にできているか」を知るための指標です。
厚生労働省(建築物環境衛生管理基準)やビル管理法、建築衛生法によって、室内の二酸化炭素の濃度は1,000ppm以下が基準だと決められています。
ただし、この基準を満たすための設備導入や定期検査などによる規制対象は限定されており、国内の1%にも満たない特定建築物という大型施設(延べ床3,000㎡)のみが対象であり、且つ未だに基準を満たしていない特定建築物が多数報告されているとのことです。
※非住宅に限定しても10%にも満たない(「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法 より)
つまり、ここについては規制の有無を可視化した指標であって、必ずしもくらしの安全や安心に直結するわけではないということを理解する必要があります。
なお、WHOの発表では理想の数値目標は800ppm以下といわれており、1,000ppmを超えると集中力や判断力が低下するとされております。
さらに1,500ppm超では明確なパフォーマンス低下が発生するという研究データもある短期機能リスクに分類されます。
指標2.PM2.5(微小微粒子状物質)
PM2.5を中心とした微小微粒子状物質とは空気中に浮遊する直径2.5㎛以下の粒子状物質の総称です。
これらは花粉など(約30㎛)と比べても極めて微細で鼻やのどの粘膜では補足されにくく、気管支や肺の奥深く、血流にまで侵入することができるため、WHOでは唯一死亡リスクに直結するIAQ指標と位置付けた最重要指標です。
さらに、累積曝露によって、確率的影響のリスクが増加する線形リスクモデル(LNTモデル)に分類されているため、長期健康リスクに影響を与えるファクトであることを理解する必要があります。
WHO(世界保健機関)のガイドラインでは、年平均で5µg/m³以下、24時間平均で15µg/m³以下という厳しい基準が設けられています。
ただし、多角的に見た実務目線では室内運用目標を年平均10㎍/㎥以下、24時間ピーク抑制25㎍/㎥未満という目標がInterim Target(中間目標)として、別途設定されています。
日本では年平均15㎍/㎥以下、24時間平均で35㎍/㎥以下と先進国(欧米)と比較すると低い水準で設定されています。欧米ではWHOの2021年の基準値改訂にならって、2024年に同様の改訂をしていますが日本は2009年の設定から今も変更がない状態が続いています。(参考:環境基準と注意喚起のための暫定指針)
指標3.TVOC(総揮発性有機化合物)
TVOC(Total Volatile Organic Compounds)とは複数のVOC(揮発性有機化合物)をまとめた総量指標です。
代表的なVOCは以下になります。
- ホルムアルデヒド
- トルエン
- キシレン
- ベンゼン
VOCは生物由来と人為由来の両方から発生しますが、一般的には人為由来に分類される接着剤や塗料、建材、家具、芳香剤などから放散される化学物質を指すことが多いです。
長期曝露は呼吸器系や神経学的影響、慢性疾患のリスク増加と関連しています。
日本ではホルムアルデヒド:100㎍/㎥(0.08ppm)やトルエン:260㎍/㎥(0.07ppm)などの主要13物質の個別管理に加えて、TVOC(化学物質の総量):400㎍/㎥を重要な指標として使っています。(参考:○室内空気中化学物質の室内濃度指針値について)
一方、WHOでは「総量では健康リスクを正確に評価できない」として、より健康影響の大きい物質ごとに基準を設けるアプローチが採られています。
そのため、WHOではTVOCは補助的指標となっています。
指標4.温度・湿度
温湿度はそれ単体でのリスク以上にVOCの放散やカビの発生、ウイルスの拡散といった複合的な問題を引き起こすため、IAQ管理において最も過小評価されやすい重要指標です。
具体的な温湿度と他指標の相互作用を以下にまとめます。
| 温湿度 | 相互作用 |
| 温度 × VOC | 高温度 → VOC放散増加高湿度 → 化学反応促進※TVOC悪化の根本要因 |
| 温度 × CO₂ | 温度が高いと:換気不足を感じやすく、不快感が先行※同じCO₂濃度でも体感悪化 |
| 湿度 × PM | 低湿度 → 再飛散高湿度 → 凝集・沈降※粒子挙動が変わる |
以下は直接的な影響要因です。
| 温湿度 | 相互作用 |
| 温度 × 健康 | 低温度 → 血流低下・作業効率低下高温度 → 熱ストレス・集中力低下※20~24℃付近がパフォーマンス最適域 |
| 湿度 × 健康 | 低湿度 → 免疫低下・感染リスク増加高湿度 → 不快感・睡眠室低下※40〜60%が最も感染しにくいゾーン |
尚、日本では温度:17〜28℃、湿度:40〜70%と幅広い基準となっています。
今後、WELL認証などの普及が進むことで環境改善の重要性がさらに高まっていくと考えられます。
【参考】IAQを評価する準重要指標について
準重要指標とは常に監視が必要なわけではないが医療・製造・高密度空間など特定用途ではリスクの中核を担うため、主旨表となるものを指します。
具体的には以下のような指標群です。



※本整理はWHOなどの国際ガイドラインや各国規制、最新の研究知見を基に、実務上のリスク構造に沿って再構成したものです。
3.準重要指標にある「微生物」とは?
準重要指標にある「微生物」とは「生物学的汚染」であり、具体的にはカビ・細菌・ウイルス・ダニなどやそれに由来する物質による空気汚染を指します。
IAQの問題というとどうしても化学物質やCO₂が注目されがちですが、生物学的汚染は特定の環境条件下ではIAQの中で最も支配的なリスクとなります。
例えば、以下のような条件下ではPMやVOCよりも優先度があがるケースもあります。
- 湿度が高い(目安:60%以上)
- 結露・水漏れがある
- 清掃・換気が不十分
- 医療・高密度空間
このように生物学的汚染は動的リスクに分類され、水分(湿度・結露)や栄養源(ホコリ・有機物)、温度、時間などの要素で指数関数的に増加します。
一方で適切な管理または基準に則した空間では問題に発展することは少ないです。
そのため、一律基準を設けることは困難であり、見えにくく再発しやすいリスクとも言われています。
以下でそれぞれを詳しく説明します。
| リスク区分 | 原因 | 特徴 | 症状 |
| 感染リスク | エアロゾル化した微生物を吸入 | 粒径:1〜5µm → 肺深部到達浮遊時間:数時間〜数日 | 免疫弱者では感染成立 |
| アレルギー・炎症リスク | カビ胞子、ダニ、細菌断片 | 低濃度でも反応長期曝露で悪化 | 鼻炎、喘息、皮膚炎など |
| 毒性リスク | マイコトキシン(カビ毒) 細菌毒素 | 揮発または粒子(PMなど)に付着長期曝露で影響 | 神経症状、慢性疲労、免疫異常など |
| 二次汚染リスク | カビが発生させる揮発性物質 | 生物汚染 → 化学汚染へ変化※MVOC(微生物由来のVOC) | 臭気、頭痛、不快感など |
以上の4つのリスクは、いずれも健康被害に直結する重要なものですが、実際の現場では見逃されやすいという共通の課題があります。
主な理由は以下のとおりです。
| 理由 | 内容 |
| 初期は空気に出ない | 微生物の増殖は壁や設備の内部で進行するため、空気測定だけでは検出が困難 |
| 症状が非特異的 | 頭痛や倦怠感など複数の要因で起こりうる症状が多く、原因として特定されにくい |
| 湿度管理の軽視 | 快適性が優先される結果、微生物の増殖条件である湿度が管理対象から外れやすい |
| 測定の難しさ | 量よりも種類が重要となるため、リアルタイム測定が現実的でない |
このように、生物学的汚染は「問題が表面化した時点で、すでに被害が進行している」という性質を持っています。
だからこそ、症状が出てからの対応ではなく、発生条件そのものをコントロールする予防的なアプローチが重要となります。
4.IAQを改善する方法は?
日本企業のIAQ改善事例の多くは、「見える化」「換気最適化」「局所清浄」の組み合わせで実現されています。
特にセンサーを活用したデータに基づく運用改善は、比較的低コストで大きな効果を生む手法として注目されています。
事例に沿って、以下のそれぞれを詳しく紹介します。
- 見える化
- 制御
- 最適化
順番に見ていきましょう
改善1.見える化
IAQ問題の本質は気づかないことです。
そのため、見える化をすることで要因が明確となり、対策の最適化が可能となります。
但し、見える化できる範囲や精度はセンサーの機能に依存するため、導入検討時の選択肢を広げて困らせる原因となるかも知れません。
改善の第一歩は意識と行動なので機能にとらわれず、予算にあったものを選ぶことをお勧めします。
基準値を理解すること、基準値と比較するデータがあること、2つだけでも長期最適化につながるアクションを取ることは可能です。
改善2.制御
制御アクションの中で最も優先順位の高いとは湿度制御です。
環境に応じて、加湿器または除湿器を導入し、湿度を40%~60%に維持することで感染リスクやカビ・ダニ発生のリスクを低減することが可能です。
さらに定期的な清掃の質を上げることで微生物の栄養源やVOCの吸着源を効果的に除去できます。
質を上げる例を以下に記載します。
| 例 | アクション |
| 水拭き | 洗浄剤を使用した拭き掃除※物理的除去から化学的除去(分解・中和・除菌など |
| 掃除機 | HEPAフィルタ付き掃除機※JIS規格掃除機では粒子径5㎛以下の微粒子(PM2.5など)は排気によって空間中に戻る可能性がある※HEPAは0.3㎛まで捕集可能 |
| フィルタ清掃 | 1回/年→2~3回/年※エアコンや除湿器、加湿器などの清掃頻度を高める |
改善3.最適化
最適化とは得られたデータをもとに運用改善を行うことを指します。
例えば、以下のようにCO₂基準を設けて、換気をルール化することでデータを見る習慣と換気をする習慣が生まれるかもしれません。
- 800ppm:注意
- 1000ppm:強制換気
その他にも人が密集しやすいエリアにはHEPA空気清浄機の設置や空調のチューニング(フィルタの高性能化、気流改善など)など、スポット単位での対策も可能です。
定期的なモニタリングを行ったりする仕組みづくりが大切です。
5.IAQに課題があるならSpread株式会社へお声がけください!
「空気が悪い気がする」「臭いが取れない」「体調不良が続く」といったお悩みがある場合は、Spread株式会社にご相談ください。
私たちは一般的な清掃業者とは異なり、IAQの観点から科学的根拠に基づいた環境改善を実施いたします。
私たちが得意とするのは以下のような一般清掃では届かない微生物・臭気・粒子レベルの改善です。
- カーペットクリーニング
- ファブリッククリーニング(ソファやカーテンなどの繊維製品)
- カビ除去(花粉・アレルゲン除去)
- ペット消臭(臭気発生源調査および除去) など
IICRC認定の技術と知識で、目に見えない空気の汚れまでしっかりとコントロールし、安心・安全な空間づくりをサポートします。
>>Spread株式会社 | 復旧・修復・回復・除去・掃除の4RCならお任せください
10.IAQ改善のためには専門的なアプローチが必要です
IAQ(室内空気質)は、単に空気のきれいさを示す指標ではありません。
そこで過ごす人の健康、快適性、建物の資産価値にまで影響を与える重要な要素です。
カビ・ダニ・微生物由来ガス(MVOC)などの生物学的汚染は、通常の清掃では対処が難しく、放置すれば健康被害や建物の劣化につながる可能性があります。
快適で衛生的な空間を維持するためには、原因を適切に把握し、科学的根拠に基づいた専門的なアプローチが必要です。
空気環境に不安を感じた場合は、ぜひSpread株式会社へお気軽にお問い合わせください。
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