現状復旧とは?正しい意味や手順についてわかりやすく解説

「賃貸物件を退去する際の現状復旧って、どこまでやればいいの?」
「敷金は全額返してもらえるの?」
「追加の費用請求はされないの?」
という不安を抱える方は少なくないでしょう。
「原状回復」「現状復帰」など、似たような用語が存在するため、その違いを正確に理解していないと思わぬトラブルを招く可能性があります。
そこで本記事では、「現状復旧」を中心に、関連する用語の違いや具体的な対応方法について、分かりやすく解説します。
賃貸物件からの退去を控えている方、「現状復旧」に関する正しい知識を身につけたい方は、ぜひ最後までご一読ください。
目次
1.現状復旧とは?原状回復と同じ意味?
賃貸物件の退去時によく耳にする「現状復旧」と「原状回復」は似たような言葉ですが、実は意味や求められる対応が異なります。
- 「現状」とは
- 「原状」とは
- 「現状」と「原状」の違いとは
上記の項目について、詳しく見ていきましょう。
(1)「現状」とは
賃貸物件における「現状」とは、その時点での物件の状態や状況を指す言葉です。
特に退去時の文脈では、入居者が退去する時点での部屋の状態を意味し、退去時に確認される具体的な状態を指します。
- 壁に画鋲の穴がある
- 床にキズがついている
- エアコンの動作が不安定
管理会社やオーナーは、この現状を確認するために退去時の立ち会い検査を行います。
この時点での状態が現状として記録され、修繕や補修の必要性を判断する基準となるのです。
また、退去時の現状は写真やビデオで記録されることが一般的で、将来的な確認や紛争解決の証拠として重要な役割を果たします。
(2)「原状」とは
「原状」とは、物件が本来持っていた、あるいは契約時点での状態を指す重要な概念です。
賃貸物件においては、入居開始時の状態を原状と定義するのが一般的です。
この原状は、入居時に撮影された写真や設備状況報告書などの記録によって明確に定められます。
例えば、壁や床に傷や汚れがない状態、設備が正常に機能している状態などが原状として記録されます。
大切なのは、この原状が退去時の修繕や原状回復の基準となることです。
入居者の故意・過失による損傷や経年劣化を超える損耗については、この原状を基準に修繕範囲や費用が決定されます
そのため、入居時には原状の状態を写真で記録したり、設備の状態を詳細にチェックシートに記入したり、住んでからも管理会社に都度報告するなどで、退去時のトラブルを未然に防ぐことが大切です。
(3)「現状」と「原状」の違いとは
「現状」と「原状」のもっとも重要な違いは、時点の基準にあります。
- 現状は退去時における物件の状態を指す
- 原状は入居開始時の状態を指す
この違いは、賃貸物件の修繕や費用負担を考える上で重要です。
例えば、入居時に新品だった壁紙(原状)が、退去時には日焼けして色褪せている(現状)場合、通常の使用による経年劣化なのか、入居者の特別な使用による損耗なのかで、費用負担の責任が変わってきます。
「原状回復義務」とは、この「現状」を「原状」に戻す義務を指しますが、すべての変化について入居者に責任があるわけではありません。
国土交通省のガイドラインでは、通常の使用による劣化や経年変化は、入居者の負担とはならないと定めています。
2.「回復」「復帰」「復旧」とは?
ここでは以下の項目について説明します。
- 「回復」とは
- 「復帰」とは
- 「復旧」とは
- 「回復」「復帰」「復旧」の違いとは
この用語は一見似ているように感じますが、実際には異なる意味を持っています。
賃貸契約における退去時の修繕義務を正しく理解するためにも、それぞれの違いを把握しておくことが重要です。
(1)「回復」とは
「回復」は、主に物件の状態を元の良好な状態に戻すことを意味します。
一例を挙げると、入居時の状態を基準として、壁紙のキズや汚れ、床材の傷みなどを修復する作業のことです。
具体的には、壁紙の張り替え、フローリングの補修、クロスの清掃などが含まれます。
この回復作業は、通常の使用による経年劣化を除いた、借主の故意・過失による損傷を対象としています。
例えば、タバコのヤニによる壁紙の変色や、家具の移動による床のキズなどが一例です。
ただし、エアコンの故障や給湯器の不具合など、設備の機能的な問題は回復の対象とは異なる扱いになります。
(2)「復帰」とは
「復帰」は、物や状態が元の位置や環境に戻ることを意味します。
賃貸物件においては、主に物件内の設備や備品の配置に関連して使用される用語です。
例えば、工事や修繕のために移動した家具や設備を元の位置に戻すことや、一時的に変更した間取りを契約時の状態に戻すことなどを指します。
また、一時的に停止していた設備の機能が正常に戻ることや、使用不可能だった部分が使用可能な状態に戻ることなども復帰と表現されます。
(3)「復旧」とは
「復旧」は、主に物件内の設備や機能が正常な状態に戻ることを意味します。
具体的には、エアコンや給湯器、換気扇などの設備機器の修理や、電気・水道などのライフラインの修繕が該当します。
賃貸物件における復旧工事では、専門的な知識や技術が必要となることが多く、通常は専門業者による作業が必要です。
例えば、エアコンの故障修理や、浴室の給湯システムの修繕などが該当します。また、この作業には適切な部品の交換や、専門的な調整が含まれることが一般的です。
(4)「回復」「復帰」「復旧」の違いとは
「回復」「復帰」「復旧」の違いは以下の通りです。
言葉 | 意味 |
回復 | 物件の外観や状態の修復、壁紙や床材などの物理的な修繕が中心 |
復帰 | 位置や環境の変更に関連し、物や機能が元の状態に戻ること |
復旧 | 設備やインフラの機能面での修繕、見た目の修復だけでなく実用的な機能の回復を含む |
例えば、回復が壁紙の張り替えを指すのに対し、復旧はエアコンの修理など、より技術的な修繕を指します。
また、復帰は家具の再配置など、位置関係の回復に重点を置いています。
特に退去時の原状回復工事では、これらの要素が複合的に関係してくるため、それぞれの意味の違いを認識しておくことが重要です。
3.その他、現状復旧と似た言葉の意味は?
賃貸物件の退去時によく耳にする「現状復旧」「原状回復」などの用語について、それぞれの意味や違いを詳しく解説します。
似たような言葉が多く混乱しやすい分野ですが、正確な理解が契約トラブルの防止につながります。
- 現状復旧
- 現状復帰
- 現状回復
- 原状復旧
- 原状復帰
- 原状回復
それぞれの特徴と使用される場面を確認していきましょう。
(1)現状復旧とは
現状復旧は、主に設備や機能面での不具合に対する修繕作業を指す用語です。
例えば、故障した給湯器を修理したり、正常に動作しないエアコンの調整を行ったりすることが該当します。
賃貸物件においては入居中に発生した設備トラブルへの対応として使用されることが多く、現在の状態から正常な状態への回復を意味するのです。
この場合の「現在の状態」とは、不具合が発生している状況を指し、「正常な状態」とは本来あるべき機能が発揮できている状態を意味します。
ただし、故障や不具合の原因が借主の故意・過失による場合は、修繕費用を借主が負担する必要があります。
(2)現状復帰とは
現状復帰という用語は、主に建設現場や工事現場で使用される専門用語で、工事や作業による変更を作業前の状態に戻すことを意味します。
賃貸契約においては原状回復という表現が一般的であり、現状復帰という言葉を使用すると誤解を招く可能性があります。
不動産賃貸借の文脈では適切ではなく、原状回復という表現を使用することが推奨されています。
(3)現状回復とは
現状回復は、物件の現在の状態を基準としてその状態を改善または維持することを意味します。
例えば、退去時に行う室内清掃や簡単な補修作業がこれに該当します。
ただし、賃貸借契約における正式な用語としては一般的ではありません。
現状回復はあくまでも現時点の状態を基準としているため、入居時の状態までさかのぼって回復することは含まれないのです。
そのため、契約上の義務を示す場合には原状回復という用語を使用するのが適切です。
清掃や簡単な補修など、見た目の改善を主な目的とする作業を指す場合に限定して使用されることが多いでしょう。
(4)原状復旧とは
原状復旧は、物件を契約時や入居時の状態に戻すための修繕作業全般を指します。
この用語は、特に大規模な修繕や複数の箇所を同時に扱う場合によく使用されます。
具体的には壁紙の張替えや破損した床材の補修など、物件全体の機能や状態を入居当初の水準まで回復させる作業が一例です。
原状復旧の範囲には、設備の修理や取り替え、内装の補修、建物本体の修繕なども含まれ、入居時の状態を基準として必要な作業を実施します。
ただし、経年劣化による自然な損耗については、借主の負担対象外です。
(5)原状復帰とは
原状復帰は、原状復旧や原状回復と同じような意味で使用される用語です。
物件を以前の状態に戻すという点では共通していますが、不動産賃貸借契約においては原状回復という表現が標準的です。
契約書や重要事項説明書などの法的文書では、誤解を避けるため原状回復という用語を使用することが推奨されています。
原状復帰という表現は、賃貸借契約における権利義務関係を明確に示す用語としては適切ではありません。
(6)原状回復とは
原状回復は、賃貸借契約におけるもっとも一般的かつ正式な用語であり、借主が退去する際に物件を入居時の状態に戻す義務のことです。
国土交通省のガイドラインでも使用されており、賃貸借契約における標準的な表現として定着しています。
例えば、自分で壁に貼った壁紙を剥がして元の状態に戻すなど、借主の故意または過失による損傷については修繕義務が発生します。
一方で、通常の使用による損耗(経年劣化)については借主の負担の対象外です。
4.原状回復の手順とは?
原状回復の具体的な手順は、通常以下6つのステップで進めていきます。
- 範囲の確認
- 業者選び・見積もり
- 工事計画
- 工事の実施
- 工事後の確認
- 最終確認
特に最初の範囲確認は重要で、これを怠ると予期せぬ追加費用が発生する可能性があります。
以下で、それぞれの手順について詳しく見ていきましょう。
手順1.範囲の確認
原状回復の第一歩は、契約書に記載された範囲と義務内容を正確に見極めることです。
契約書には「通常損耗」と「借主負担」の区分が明記されているはずです。
通常損耗とは、日常的な使用による劣化や自然損耗を指し、基本的に借主負担とはなりません。
一方、借主の故意・過失による損傷や、通常の使用方法を超えた使用による損耗については、借主負担です。
例えば、壁紙のヤニ汚れや、ペットによる傷などが該当します。
契約書の確認後は、写真や文章で現在の物件の状態を記録しておくことをおすすめします。
手順2.業者選び・見積もり
退去時の立ち会い確認は、管理会社との重要な協議の場となります。
この際、修繕が必要な箇所を管理会社と一緒に細かくチェックし、リストアップすることが大切です。
特に、壁や床の傷、設備の不具合など、目につきやすい箇所は入念に確認します。
追加の修繕が必要となった場合は、後日管理会社と協議し、合意を得ることが重要です。
見積もりの取得前に合意しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
また、修繕箇所の写真を撮影し、記録として残しておくと、見積もり内容の妥当性を確認する際の参考資料となります。
手順3.工事計画
原状回復工事を行う業者の選定は慎重に行う必要があります。
管理会社から指定業者の紹介がある場合は、その業者を優先的に選定しなければなりません。
どうしても自分で選定したい場合は、事前に許可を取ってから見積りもしくは相談をしましょう。
見積書には、工事の詳細な内容、使用する材料、工期、保証内容などが明記されているか確認してください。
また、見積金額の内訳も細かく確認し、不明な点があれば質問することが重要です。
追加費用が発生する可能性がある項目については、事前に確認しておきましょう。
手順4.工事の実施
原状回復工事では、壁紙の張り替え、床材の補修、設備の修理など、さまざまな作業が行われます。
工事開始前に、業者と具体的な作業内容や使用する材料について最終確認を行うことが重要です。
特に、色や材質などの細かい仕様については、サンプルを確認しながら決定します。
不具合や追加の修繕が必要な箇所が見つかった場合は、速やかに業者と相談し、対応を決定してください。
また、工事の各段階で写真を撮影しておくと、確認資料として後々役立ちます。
手順5.工事後の確認
工事完了後は、すべての修繕箇所を細かくチェックします。
壁紙の継ぎ目や張り方、床材の仕上がり、設備の動作確認など、細部まで入念に確認することが重要です。
特に、光の当たり具合によって見え方が変わる壁紙などは、昼と夜の両方で確認するのがベストです。
また、管理会社による確認が必要な場合は、工事完了後速やかに連絡を取り、立ち会い確認の日程を調整しましょう。
手順6.最終確認
原状回復工事の最終段階として、賃貸人や不動産会社との最終確認を実施します。
この確認では、工事内容が契約時の取り決めに沿って適切に実施されているか、細部まで確認されます。
特に大切なのは、工事前後の写真や修繕箇所のビフォーアフター写真を用意しておくことです。
また、工事に関する書類(見積書、請求書、工事報告書など)も整理して保管しておく必要があります。
この書類は、敷金の精算時に必要となる場合があります。
最終確認で問題がなければ、確認書にサインをもらい、工事完了です。
書類は最低でも5年間は保管しておくことをおすすめします。
5.現状復旧やその他の用語について正しく理解しよう
賃貸物件の退去時に避けて通れない「現状復旧」について解説しました。
「現状」と「原状」、「回復」「復帰」「復旧」など、一見似ているように見える言葉でも、その意味合いには微妙な違いがあります。
特に大切なのは、「現状復旧」は現在の状態に戻すことを意味し、「原状回復」は契約時の状態に戻すことを指すという点です。
契約書の文言をしっかりと確認し、どちらの対応が求められているのかを把握することが重要です。
契約書の確認時や退去時の立ち会い確認の際には、この用語の違いを意識しながら、オーナーや不動産会社とコミュニケーションを取ることをおすすめします。