「火事の後、天井や壁に広がった煤汚れが全然落ちない」
「クローゼットや食器棚の中にも煤が広がっていたけどどこまで広がっているの?」
「通常の掃除用具や洗剤では対処できない」
「AIに聞いた掃除用具や洗剤だけでは汚れも臭いも残ったまま」
といった悩みを抱えていませんか?
火災による煤汚れは、誤った方法で掃除をするとかえって煤が素材の内部に浸透してしまったり、建材を傷めてしまったりするリスクがあります。
一方で汚れの程度や範囲によっては、適切な道具と方法を用いることで自力での清掃が可能な場合もあります。
大切なのは、状態を正しく見極め、煤汚れに応じた適切な対処方法を選ぶことです。
そこで本記事では、科学的根拠に基づく効果的な煤汚れの落とし方や、自力で実践する際の重要なポイント、そして業者への依頼が必要なケースについて詳しく解説します。
火災後の煤汚れに悩まれている方、効果的な清掃方法を知りたい方は、ぜひ最後までご一読ください。
※ここで紹介する汚れを落とす行為は美観目的であり、汚染を修復する行為ではございません
目次
1.煤汚れの落とし方は汚れの範囲によって異なります
火災後の煤汚れの落とし方は、以下のように汚れの範囲によって大きく異なります。
- 煤で汚れた範囲が1部屋だけに留まっている場合
- 煤で汚れた範囲が2部屋以上に煤が広がっている場合
上記の2つのケースにわけて、それぞれの対処方法を詳しく説明します。
ケース1.煤で汚れた範囲が1部屋だけに留まっている場合
煤は煙の主成分であるため、移動挙動は煙と同様です。
具体的には熱対流や圧力差による移動・拡散や空気中に残留・循環する性質を持っているため、部屋全体に広がることがほとんどで1部屋だけに被害が留まるケースは非常に稀になります。
そのため、1部屋だけに留まっている場合は自力での清掃作業が可能でしょう。
ただし、自力で作業を行う前に、必ず煤(煙)の種類を見極める必要があります。
高温燃焼由来でさらさらした乾性煤であれば自力清掃の余地がありますが、粘着性のある湿性煤、台所火災で生じるタンパク質煤、プラスチック類の燃焼による合成材料煤の場合は、拭くほど汚れが広がるため専門業者へ依頼してください。
まずスートスポンジ(ケミカルスポンジ)を使用して、表面に付着・堆積している煤を除去することから始めましょう。
日本では馴染みのないスートスポンジですが、”スート(soot)”とは英語で”煤”を意味する言葉で直訳すると”煤除去専用スポンジ”といいます。
これは水や洗剤を使わないドライクリーニングという方法で煤以外にも油系(疎水性)の汚れ落としに最適です。
次に、乾性煤に適合した弱アルカリ性洗浄剤(pH8~10)を使用して、表面残留・内部浸透した煤を除去します。
作業中は必ず換気を行い、防塵マスクを着用して煤の粉じんを吸い込まないように注意してください。
また、煤除去に使用する洗浄剤は強力なものが多いので素材によっては変色・脱色する恐れがあります。
その為、作業をする前に部分的な変色・脱色確認テストを行った上で使用してください。
また、洗浄剤による除去が終わった際はpH調整のために水拭きを数回繰り返すようにしましょう。
これにより、残留薬剤による変色・脱色リスクや建材ダメージリスクなどを低減させることができます。
ケース2.煤で汚れた範囲が2部屋以上に煤が広がっている場合
煤汚れが広範囲に及ぶ場合は、室内環境の汚染度が高いため、専門業者への依頼を強く推奨します。
自力での清掃は煤をさらに広げてしまったり、建材を傷めたりするリスクが高くなることに加えて、さまざまな健康被害を引き起こす要因となります。
特に壁や天井などに煤が付着している場合は室内で発生、または外部から室内に侵入した煤微粒子の量がかなり多いことが推測できます。
また、火煙被害は時間経過によって被害が深刻化していく進行型であるため、迅速かつ適切な対処が必要です。
米国では火災発生後、72時間以内(3日以内)が被害固定を防げる最後の猶予とされているほど、被害の進行スピードは速く、時間猶予を過ぎると復旧ができない状態(不可逆状態)に移行するとされています。
どうしても自力で清掃を行う必要がある場合は、以下の点に特に注意を払ってください。
まず、当被害状況下は欧米の労働安全基準(OSHA)ではPPE(個人用防護具)レベルCに指定されます。
OSHAのPPEレベル分類はA~Dの4段階あり、レベルCは空気中の汚染物質の種類が判明しており、空気精製式呼吸用保護具(APR)と一定の皮膚保護で対応できる段階を指します。
なぜなら、呼吸器刺激や発がん性懸念、皮膚曝露など、さまざまな健康被害リスクが潜んでいるからです。
その為、以下のような防護をすることで健康リスクを安全基準まで低減することができます。
| 推奨装備 | 防塵マスク(N95/DS2規格以上。PAH曝露が高い場合はP100カートリッジ付きの半面マスク)) 使い捨て防護服 ニトリル手袋(二重推奨) ゴーグル 防滑ブーツ |
| 推奨機材 | 捕集機(HEPAフィルター搭載:99.97% @ 0.3μm) |
また、美観目的の清掃ではなく、健康被害の最小化(復旧)を目的とする場合、最低限の対応としても以下のような除去作業をおすすめします。
- HEPAバキューミング(微粒子捕集) ※常時稼働および局所吸引
- ドライクリーニング(油性・脂性残渣除去)
- ウェットクリーニング(水溶性残渣除去)※残留薬剤の回収および乾燥含む
日本では整備が不十分な目に見えないリスクをどのように評価し、どのように対応するか、慎重な検討が必要であると私たちは考えています。
また、以下の記事では、専門業者が行う火災現場の掃除について解説中です。
具体的な作業内容や費用、業者選びのポイントを解説しているので、本記事と併せてご確認ください。
火災事故の特殊清掃とは?作業内容・費用・業者選びのポイントを解説
2.科学的根拠に基づく効果的な煤汚れの落とし方
以下にて、天井や壁、床、その他家財などに付着した煤の効率的な落とし方を詳しく説明します。
- 乾式洗浄
- 湿式洗浄
- 化学洗浄・中和
順番に見ていきましょう。
落とし方1.乾式洗浄
乾式洗浄とはエアースクラバーやスートスポンジなどを使用する、水を使用しないドライクリーニングです。
作業目的は主に表面に堆積した遊離煤粒子の除去と後続工程の効率向上で、天井や壁クロス表面、床表面、建具、家具外装などを対象とした作業です。
具体的な作業手順は以下の通りです。
- 作業範囲の養生・空調の停止
- エアースクラバーまたはHEPA付き掃除機で高所→低所、奥→手前に吸引
- なるべく接触圧をかけずにスポンジで転写回収(軽く拭き取る)
以上の作業で指触やスポンジに黒色転写が減少、光照射で浮遊粉塵が減少したなどが確認できたら次の工程に進みましょう。
また、作業前・中の注意は以下の通りです。
- 当作業前に水拭きをしないこと
- スポンジは強く擦らないこと
- 使用するエアスクラバーや掃除機はHEPAフィルター以上の捕集機能を持ったものを使用すること
乾式洗浄は掃除ではなく、汚染物質の移送管理といわれる工程です。
この作業の品質が低いと、後続の洗浄剤使用量・工数・臭気残存率が増加することを理解した上で実施してください。
落とし方2.湿式洗浄
湿式洗浄とは洗浄剤や、必要に応じて消泡・リンス剤などを使用した界面活性による汚染分離と回収工程です。
使用する洗浄剤は一律ではなく、煤(煙残渣)の種類に応じて選定します。
煤の種類と洗浄剤の対応関係は以下のとおりです。
- 乾性煤(高温燃焼由来のさらさらした煤):弱アルカリ性洗浄剤(pH8~10)
- 湿性煤(低温燃焼由来の粘着性の煤):専用界面活性剤・脱脂系洗浄剤
- タンパク質煤(台所火災由来):専用の酵素系洗浄剤
- 合成材料煤・燃料油残渣:専用脱脂剤
作業目的は主に表面に残る微細煤膜、油分、可溶性残渣の除去による美観回復でガラスや金属面、塗装面、什器外装などの非多孔質材などを対象とした作業です。
具体的な作業手順は以下の通りです。
- テスト洗浄(変色確認)
- プレワイプ(簡易拭き取り)で粗汚れ除去
- 洗浄液塗布→短時間接触
- 一方向拭き上げ
- リンス拭き(残留薬剤の回収)
- 乾燥
以上の作業で拭き筋がなくなった、べたつきがなくなった、黒転写量が減少したことが確認できたら次の工程に進みましょう。
また、作業における注意点は以下のとおりです。
- ワイプに使用するクロスや、マイクロファイバーなどはこまめに交換しましょう
- 洗剤濃度過多は残留べたつきの原因となります
- リンスの省略は再汚染の原因になるので消泡・リンス剤を使用せず水拭きなどで回収しましょう
落とし方3.化学洗浄・中和
化学洗浄・中和とはアルカリ中和剤や溶剤系タール分解剤、キレート配合洗浄剤、必要に応じて腐食抑制剤などを使用する残渣の性状に合わせて行う作業です。
但し、基本的に煤被害のみの場合は当工程までする必要はありませんので参考程度の説明に留めます。
作業目的は主に酸性燃焼残渣の中和や樹脂由来タール、油脂の分解で黄変膜や金属部材、PVCや家電燃焼後の周辺表面を対象とした作業です。
具体的な作業手順は以下の通りです。
- 材質確認・目立たない箇所で反応テスト
- pH測定(許容値:pH6.0~8.0)
- 希釈調整および局所塗布
- 回収拭き取り
- リンスまたは再中和
- 乾燥・再測定
火災現場では、汚れよりも反応性残渣(持続的な化学反応をおこす目に見えない物質)が長期損害の本質とされています。
3.煤汚れの落とし方を自力で実践するときのポイント
基本的に保険を活用した上で専門業者へ依頼することをお勧めしますが、もし上記で解説した煤汚れの落とし方を自力で実践するときのポイントは、次のとおりです。
- 二次被害を意識しつつ、迅速に除去する
- 作業手順を理解し、工程の順番を間違えないようにする
- 洗浄剤は必ず回収し、乾燥させる
これらのポイントを意識しながら、煤汚れの除去作業を進めていきましょう。
ポイント1.二次被害を意識しつつ、迅速に除去する
米国のレストレーション業界では火災後72時間を過ぎると二次被害フェーズに入るとされており、1か月以上の遅延は明確に長期放置ダメージとして扱われます。
なぜなら、火煙残渣はあらゆるのものの腐食や劣化を招く上、浸透、固定化、再反応などによって、被害を拡大させていく性質を持っているからです。
但し、この初動72時間の原則は出火元現場の話ですので近隣火災による煤被害だけであれば、同様の被害リスクはあるものの進行速度が大きく異なるため、時間猶予はもっと長くなります。
自力で実践する場合はどうしても必要物の準備に時間がかかってしまうので早め早めの対応を心がけましょう。
また、配線や家電、電子機器類は煤中の酸性物質と湿度の影響を受けやすく、経時被害として遅発性故障を起こしやすい傾向にあるため、家財保険などを活用して、買い替えることをおススメします。
ポイント2.作業手順を理解し、工程の順番を間違えないようにする
火災は煤やタール、熱分解生成物、PAH、酸性ガス、水溶性ガスなど多相の汚染で構成されるため、単一手段では絶対に除去できないとされています。
その為、それぞれの性状に合わせて段階的にアプローチすることが重要となります。
本記事では煤汚れにフォーカスしているため、基本的には乾式洗浄→湿式洗浄という順で作業を行ってください。
この順番を間違えると効果が激減する上に汚染被害を拡大させる原因にもなり得るので注意してください。
また、乾式洗浄は湿式洗浄とは異なり、目に見える効果を実感しづらい作業であることから、疎かになりがちですが、後続の作業につながる大事な前処理であることを理解した上で実行してください。
ポイント3.洗浄剤は必ず回収し、乾燥させる
日本ではここが軽視されがちなため、あまり聞き馴染みのない作業ですが非常に重要なポイントとなっています。
原則、万能な薬剤は存在しないため、両極の物質が混在している場合は2種類以上の薬剤を使用し、段階的に除去することが一般的です。
その為、火災現場など複合的且つ多量の有害物質が存在する現場では特に薬剤を残留させてしまうというのは二次被害を招く原因を残すことと同義となります。
なぜなら、私たちは残留薬剤がその他物質と化学反応(悪臭生成や腐食、劣化、分解、浸透など)を起こす可能性を知っているからです。
日本でもハウスクリーニング以外のクリーナーやレストアラーなどは欧米の技術を取り入れている業者が多いため、洗浄剤の回収工程としてリンス(rinse)を行い、弱酸性pH調整剤などの専用すすぎ剤を使用するのが一般的です。
4.煤汚れがひどい場合は業者への依頼を検討しよう
煤汚れの範囲が広く、自力での対応が難しいと判断した場合は、専門業者への依頼を検討しましょう。
特に2部屋以上に煤が広がっている場合は、専門的な知識と技術を持った業者による清掃が必要です。
火災による煤汚れは、一般的な掃除用具や洗剤では対応が難しく、むしろ誤った方法で清掃することで建材を傷めたり、素材の内部に浸透してしまったりする恐れがあります。
自力の清掃に不安を感じる場合は、早めに専門業者へ相談しましょう。
また、私たちSpread株式会社のコラムにある「火災復旧」に関する情報をまとめたものが以下の記事です。
火災後の清掃・修繕・有害物質除去・費用相場など、幅広い内容を紹介しています。
他にも火災復旧に関する疑問や悩みがあれば、こちらの記事をチェックしてみてください。
▶ 火災復旧に関する記事まとめ|地域別の対応業者や火災ゴミの片付けなどを紹介
5.火災後の煤汚れの復旧は4RCへご相談ください
煤汚れの範囲が広い場合や、湿性煤・タンパク質煤が疑われる場合は、私たち4RC(Spread株式会社)へご相談ください。
4RCは米国IICRCの認定事業者で、FSRT(火災・煙害復旧)に加えOCT(臭気制御)・HST(健康安全)の認定技術者が、現場アセスメントから施工まで一貫して担当します。
煤の種類の判別、HEPAバキューミングによる乾式除去、煤の種類に応じた洗浄剤の選定、リンスによる残留薬剤の回収まで、米国基準に準拠した工程で対応可能です。
また、カビ除去分野では世界的な専門組織Goldmorr Japanと連携しており、火災後に併発しやすいカビ・臭気被害までワンストップで対応します。
火災保険を活用した復旧のご相談も承っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。


