火災事故の特殊清掃とは?作業内容・費用・業者選びのポイントを解説

火災事故の特殊清掃とは?作業内容・費用・業者選びのポイントを解説

「火災事故の特殊清掃で火災保険は使える?」

「すすや焦げ跡の除去は自分たちでもできる?」

という不安や疑問を抱えている方は少なくありません。

火災による被害は、目に見える物的損害だけでなく、すすや有害物質による健康被害、悪臭による近隣トラブルなどの二次被害をもたらす可能性があります。

特に深刻なのは、一般的な清掃では対処できず、特殊清掃が必要になるケースが多いということです。

素人による不適切な清掃は、かえって被害を拡大させたり、余計な費用がかかったりするリスクもあります。

そこで本記事では、火災事故後の特殊清掃について、具体的な作業内容から費用相場、業者の選び方まで、必要な情報をまとめました。

火災事故の後片付けに不安を感じている方や適切な対処方法を知りたい方は、ぜひ最後までご一読ください。

1.火災事故の特殊清掃とは?

火災事故の特殊清掃とは?

火災事故の特殊清掃とは、火災現場に残された煙やスス、有害物質、消火活動で使用された水や薬剤などを、専門的な技術や設備を用いて安全に除去・処理する作業です。

一般的な清掃会社では対応できない特殊な技術と専門知識が必要になります。

具体的な作業内容は、以下のとおりです。

  • 建物内部に付着したススの除去
  • 焼失した家具や建材などの撤去
  • 消火活動で使用された水や消火剤の処理
  • 有害物質(アスベストやダイオキシンなど)の調査と適切な処理
  • 火災特有の臭い(焼け焦げ臭)の除去
  • 建物の修復可能性の調査

火災事故の特殊清掃は、単なる清掃作業ではありません。

火災現場には目に見えない有害物質が残留しているので、人体に悪影響をおよぼす恐れがあるのです。

また、不適切な処理は建物の劣化を進行させたり、近隣への被害を引き起こしたりする可能性もあります。

そのため、火災事故の後処理には、専門的な知識と経験を持つ特殊清掃業者による適切な対応が不可欠です。

2.火災事故の特殊清掃が必要な理由

火災事故の特殊清掃が必要な理由

火災事故の後片付けで特殊清掃が必要になる理由として、以下の3つが挙げられます。

  1. 健康被害の恐れ
  2. 自力での消臭が難しいため
  3. 近隣に迷惑をかけるため

それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。

理由1.健康被害の恐れがあるため

建材に使用されているアスベストが、火災により飛散して健康被害が起きる可能性があります。

アスベストを吸い込むと、肺がんや中皮腫などの重篤な病気を引き起こす危険性があるからです。

また、プラスチックや化学物質を含む家具や建材が燃えることで発生する有毒ガスも軽視できません。

目に見えない形で建物内に残留し、長期間にわたって健康被害をもたらす恐れがあります。

素人による清掃では、アスベストや有毒ガスなどの有害物質を適切に処理することは困難です。

そのため、安全な方法で除去作業を行える専門業者に特殊清掃を依頼する必要があります。

理由2.自力での消臭が難しいため

火災による焼け焦げ臭は、一般的な消臭剤や換気では対処できないほど強固です。

煙の粒子は建材の深部まで染み込み、時間が経過するほど除去は困難になります。

特に、火災で発生するススは微細な粒子で、壁や天井の細かい隙間にまで入り込むため特殊な脱臭装置や業務用の洗浄剤を使用しないと完全に除去できません。

また、建材自体が焦げている場合は、表面処理や部分的な交換が必要になることもあります。

そのため状況に応じて最適な消臭方法を選択し、確実に臭いを除去できる特殊清掃を実施する必要があるのです。

理由3.近隣に迷惑をかけるため

火災現場を放置することは、近隣住民との関係悪化を招く可能性があります。

焼け焦げ臭は風向きによって広範囲に広がり、近隣住民の日常生活に大きな影響を与えるためです。

特に集合住宅の場合、臭いは共用部分や他の住戸にまで影響を及ぼします。

また、火災現場には燃え残りやススが残されており、風で飛散すると周辺の建物や洗濯物を汚す原因になります。

さらに、放置された火災現場は害虫や害獣の温床となる可能性もあり、衛生面での問題も発生しかねません。

近隣トラブルを防ぎ、良好な関係を維持するためにも、迅速な特殊清掃が必要不可欠なのです。

3.火災事故の現場で行う特殊清掃の内容

火災事故の現場で行う特殊清掃の内容

火災事故の現場で行う特殊清掃の具体的な内容は、以下の5つです。

  1. アスベスト(石綿)含有量調査
  2. 残留物・燃えがらの撤去作業
  3. 建物の解体作業
  4. ススの除去作業
  5. 消臭作業

これらは、一般の清掃業者では対応できない専門性の高い作業です。

次項から、それぞれの作業内容について詳しく解説します。

内容1.アスベスト(石綿)含有量調査

火災事故後の特殊清掃で最初に行うのが、アスベスト(石綿)の含有量調査です。

特に1995年以前に建てられた建物では断熱材や建材にアスベストが使用されていることも多く、火災による建材の破損で飛散する恐れがあります。

現地調査では、専門の技術者が防護服を着用して建材のサンプリングを実施し、分析機関での検査によってアスベストの有無と含有量を正確に判定します。

アスベストが検出された場合は、特殊な除去作業が必要と判断され、一般の清掃業者では対応できません。

この調査は法令で定められた資格を持つ業者でなければ実施できず、人体に深刻な影響をおよぼすアスベストの二次被害を防ぐために不可欠です。

内容2.残留物・燃えがらの撤去作業

残留物・燃えがらの撤去作業は、火災現場の安全確保と復旧の第一歩です。

焼失した家具、家電製品、建材などは有害物質を含む可能性があるため、専門的な知識を持った作業員による適切な分別と処理が必要です。

また、家電リサイクル法対象製品や危険物は、法令に従った適切な処理が必要ですが、特殊清掃業者は作業に必要な許認可を持ち、適切な処分ルートを確保しています。

素人による不適切な処理は、法令違反や環境問題につながる可能性があるため、専門業者への依頼が不可欠です。

内容3.建物の解体作業

火災による建物の損傷状況に応じて、部分的または全体的な解体作業が必要となります。

この作業では、建築の専門知識を持った技術者による綿密な調査と、安全な解体計画を立てることが不可欠です。

解体作業では、まず建物の安全性を評価し、倒壊の危険性がある箇所を特定した後、建物の構造や使用されている建材を考慮した適切な解体方法が選択されます。

解体工事に必要な資格や許可を保有している特殊清掃業者は、地域ルールにも精通しているほか、解体後の廃材処理も適切に行えるため、一連の作業をスムーズに進められます。

内容4.ススの除去作業

火災現場に残されたススは有害物質を含む可能性があるため、専門的な除去作業が必要です。

この作業ではドライクリーニング(油性薬剤を使用した清掃)とウェットクリーニング(水性薬剤を使用した清掃)の二段階の作業で壁や天井に付着したスス(有害物質など)を徹底的に除去します。

HEPAフィルター付きの特殊大型空気清浄機で浮遊有害物質を除去し、その後専用の洗剤と高温給排水洗浄機で深部に浸透した有害物質の除去をするといった作業が一般的です。

建材の素材に応じて洗剤や洗浄方法を選ぶ必要があり、火災事故の現場によって細かな作業内容は異なります。

内容5.消臭作業

火災現場特有の強い焼け焦げ臭がある場合は、化学的な知識に基づいて臭いの発生源と種類を特定し、最適な消臭方法を選択しなければなりません。

特殊清掃における消臭作業では、まず業務用オゾン発生装置を使用して空間に漂う臭い分子を分解します。

その後、建材に染み込んだ臭いに対しては複数の専用消臭剤をブレンドして、吹付けや噴霧、塗布などして臭いの分子を化学的に分解するほか、必要に応じて躯体の封孔処理(特殊コーティング)も実施します。

4.火災事故の特殊清掃の費用相場

火災事故の特殊清掃の費用相場

火災事故後の特殊清掃にかかる費用は、被害状況や建物の規模によって大きく変動します。

一般的な30坪2階建て木造住宅の場合、清掃費用の相場はおよそ100万円~400万円です。

費用の内訳とその目安については下記の表を参考にしてください。

項目費用
アスベスト(石綿)含有量調査10万円~30万円
残留物・燃えがらの撤去30万円~80万円
建物の部分解体50万円~150万円
ススの除去作業20万円~80万円
消臭作業20万円~60万円

ただし上記はあくまでも目安であり、実際の費用は火災の規模や建物の構造、被害の程度によって変わってきます。

また、作業途中で追加の処理が必要になることもあり、その場合は別途費用が発生します。

そのため、見積もりを依頼する際には、以下の点を必ず確認しましょう。

  • 清掃する範囲は明確か
  • 追加作業が必要になった場合の費用はいくらか
  • 廃棄物の処理費用は含まれているか
  • 必要な許認可手続きの費用は含まれているか

これだけの費用がかかることに驚かれる方も多いかもしれません。

しかし、実は適切な方法を知っていれば、費用を抑えることも可能です。

次章では、火災事故の特殊清掃にかかる費用を抑えるための具体的なポイントを紹介します。

5.火災事故の特殊清掃の費用を抑えるポイント

火災事故の特殊清掃の費用を抑えるポイント

先述のとおり、火災事故の特殊清掃の費用は高額になりやすい傾向にあります

しかし、以下のポイントを押さえることで費用を適切に抑えられるのです。

  • 火災保険を活用する
  • 複数の業者に見積もりを依頼する
  • 清掃を依頼する範囲を明確にする
  • 早期対応を心がける
  • 簡単な作業は自分で対応する

それでは、具体的な方法を見ていきましょう。

ポイント1.火災保険を活用する

火災保険に加入している場合、特殊清掃費用も補償されるケースがあります。

保険の種類や契約内容によって補償範囲は異なりますが、多くの場合、火災による建物の修復費用や清掃費用が含まれているからです。

まずは加入している火災保険の契約内容を確認し、保険会社に相談してください。

保険適用の可否を早期に確認することで、自己負担を最小限に抑えられます。

保険会社から提携している特殊清掃業者を紹介してもらえる場合もあり、信頼できる業者選びにもつながるでしょう。

ポイント2.複数の業者に見積もりを依頼する

特殊清掃の費用は業者によって大きく異なるため、最低でも3社以上の業者から見積もりを取ることをおすすめします。

見積もりを比較する際は金額だけでなく、作業内容や使う機材、作業時間なども確認しましょう。

また、実績や専門性も重要な判断基準です。

複数の見積もりを比較検討することで、適正価格で質の高いサービスを選択できます。

ポイント3.清掃を依頼する範囲を明確にする

特殊清掃の費用を抑えるには、作業範囲を明確にしましょう。

火災の被害状況を詳しく確認し、必要な作業と不要な作業を区別できるからです。

業者との打ち合わせでは、具体的な作業内容や範囲を細かく確認し、見積書に明記してもらいましょう。

例えば「壁のスス除去」「天井の清掃」「床材の交換」など、項目ごとに作業内容と費用を明確にすることで、不要な作業を省けます。

ポイント4.早期対応を心がける

火災現場を放置すると、ススや臭いが建材に染み込み、より高度な清掃技術が必要になります。

また、カビの発生や建材の劣化も進行し、修復費用が増大する可能性もあるため、可能な限り早急に特殊清掃業者に連絡しましょう。

早期対応により、作業の難易度が下がり、結果として費用の削減につながります。

ポイント5.簡単な作業は自分で対応する

特殊清掃の費用を抑えるには、安全に行える簡単な作業は自分で対応することもポイントです。

例えば、燃えていない家具や備品の片付け、不燃物の分別などは、専門的な技術がなくても対応可能です。

ただし、危険を伴う作業や専門知識が必要な作業は、必ず業者に依頼しましょう。

特に、アスベストが含まれている建材の撤去や電気設備周りの清掃は、専門家に任せる必要があります。

6.火災事故の特殊清業者の選び方

火災事故の特殊清業者の選び方

信頼できる特殊清掃業者を見つけるためには、以下の選び方を押さえることがポイントです。

  • 実績・専門性の高い業者か確認する
  • 見積もり・契約内容が明確か確認する
  • 保険対応が可能か確認する

それぞれについて、以下で詳しく解説します。

選び方1.実績・専門性の高い業者か確認する

火災事故後の特殊清掃には一般的な清掃とは異なる専門的な知識と技術が必要なため、まず実績と専門性を重視しましょう。

具体的には、以下の点を確認してください。

  • 「建設業許可」または「解体事業者の登録」をしているか
  • 特殊清掃専門の協会への加盟状況
  • 過去の火災事故における清掃実績件数
  • 顧客からの評価やレビューの内容

これらの情報は、業者のWebサイトや問い合わせを通じて確認できます。

また地域の消防署や保険会社に相談すると、信頼できる業者を紹介してもらえる場合もあります。

選び方2.見積もり・契約内容が明確か確認する

特殊清掃の費用は作業内容によって大きく変動するため、見積もりと契約内容の確認は特に重要です。

最低でも3社以上から見積もりを取得し、以下の内容を比較検討することをおすすめします。

  • 作業範囲と具体的な清掃内容
  • 使う洗剤や機材の種類
  • 作業期間の目安
  • 料金の内訳(人件費、材料費、廃棄物処理費など)
  • アフターフォローの内容

見積書や契約書には、追加料金が発生する条件なども明記されているか確認しましょう。

不明な点があれば、必ず事前に質問して解消しておくことが重要です。

選び方3.保険対応が可能か確認する

火災保険を使う場合、保険対応に精通した業者を選ぶことで、手続きの負担を軽減できます。

具体的には、以下のような対応が可能な業者を探しましょう。

  • 保険会社と直接交渉してくれるか
  • 保険申請に必要な書類の作成をサポートしてくれるか
  • 保険査定の立会いに対応してくれるか
  • 保険金請求のアドバイスをしてくれるか

特に主要な保険会社との取引実績がある大手の特殊清掃業者は、スムーズな保険対応が期待できます。

見積もり依頼時に保険対応の可否を確認し、対応可能な場合は具体的なサポート内容についても詳しく聞いておきましょう。

保険会社との連携がスムーズな業者を選ぶことで、保険金の受け取りまでの時間を短縮できる可能性があります。

火災事故で特殊清掃が必要になったら速やかに依頼しましょう

火災事故後の特殊清掃は、健康被害の防止や二次被害の予防に欠かせない重要な作業です。

アスベスト(石綿)調査、残留物の撤去、ススの除去、消臭作業など、専門的な知識と技術が必要となる一連の工程を、素人判断で進めることはリスクが高いといえます。

特殊清掃業者の選定においては、実績や専門性はもちろんのこと、見積もりや契約内容の透明性、保険対応の可否などを総合的に判断することが重要です。

火災事故の影響は時間とともに深刻化する傾向にあり、特にススや煙の臭いは建材への染み込みが進むほど近隣への影響も大きくなります。

そのため、火災事故が発生した場合はできるだけ早期に専門業者へ相談し、適切な特殊清掃を依頼しましょう。

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