死臭を取り除く特殊清掃とは?除去方法や費用相場も解説

特殊清掃は、死臭の原因となる物質を化学的知見をもとに特定し、専門的な技術と機材を用いて消臭を行う専門サービスです。
適切な手順で行えば、重度な死臭でも完全な消臭が可能です。
しかし「死臭を取り除くために特殊清掃を依頼したい」とお悩みの方の多くは、初めてのことに戸惑いや不安を感じているのではないでしょうか。
「悪徳な業者に引っかかりたくない」「どのように依頼したらよいのかわからない」「本当に消臭できるの?」などと考えている方も少なくはないいはずです。
そこで本記事では、死臭の特殊清掃について作業の具体的な手順から費用相場、信頼できる業者の選び方まで、網羅的な情報をまとめました。
死臭の問題を解決したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
1.特殊清掃が必要な死臭はどのような臭い?
死臭は、遺体の腐敗過程で発生する特有の強烈な臭いです。
一般的な生活臭とは全く異なり、極めて不快な臭気を放ちます。
死臭が生じるのは、遺体から染み出た体液や組織が分解される過程でアンモニア、硫化水素、メルカプタンなどの有機物質やガスが発生するためです。
これらの臭いが混ざり合うことで、腐敗した生ゴミやチーズの臭いをはるかに超える強烈な悪臭が発生します。
特に気温や湿度が高い環境では腐敗の進行が加速し、死臭はさらに広まります。
一度臭いの粒子が建材や家具に深く浸透すると、市販の消臭剤や家庭用洗剤では対処できません。
また死臭は時間の経過とともに変化し、発見が遅れるほど臭いは強くなります。
そのため一般の清掃方法では除去が困難で、特殊な薬剤や専門的な技術を持つ特殊清掃業者による対応が必要不可欠です。
死臭を完全に除去するには、汚染源の特定から消臭作業まで、専門的なアプローチが求められます。
2.死臭の特殊清掃を自分で行うことはできる?
死臭の特殊清掃は、軽度の場合に限り自力での対応も可能ですが、安全性と効果の面から専門業者への依頼を強く推奨します。
自力での清掃を試みる場合、以下のリスクを十分に理解する必要があります。
- 病原菌やウイルスへの感染リスクが高いこと
- 専用の防護服や除菌液などの装備が必須なこと
- 正しい知識と経験がないと、臭いが残存するケースが多いこと
- 原因物除去のため、電動工具を必要することが多いこと
- 健康弱者(子供や老人、病気の方など)への二次感染リスクが高いこと
特に発見が遅れて腐敗が進行したケースでは、以下の理由から自力での対応は事実上不可能です。
- 専門的な消臭機材や洗浄装置が必須になる
- 建材の交換など、大規模な工事が必要になることもある
- 素人では見落としがちな細部まで徹底的な清掃が必要になる
- 廃棄物の適切な処理に関する法的知識が必要になる
死臭の特殊清掃は、表面的な清掃だけでは不十分です。
二次感染を防ぎつつ臭いの元となる物質を完全に除去するには、専門的な知識と技術と設備が不可欠です。
費用面で迷われる方もいますが、後々のトラブルを防ぐためにも、最初から特殊清掃の専門業者に依頼することをおすすめします。
3.特殊清掃業者が行う死臭の除去方法と手順
特殊清掃業者による死臭の除去は、以下の7つのステップで進められ、各工程を確実に行うことで死臭を除去できます。
- 汚染隔離作業(室内の区分け)
- 汚染低減作業
- 洗浄作業(清掃・除菌)
- 解体作業(汚染された部位の撤去・防臭処理)
- 除菌作業
- 消臭作業(オゾン消臭)
- 原状回復工事(原状回復工事)
それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。
手順1.汚染隔離作業(室内の区分け)
汚染隔離作業(室内の区分け)では、臭いの拡散を防ぎ、効率的な作業を実現するために、まず汚染エリアの特定と区分けを行います。
作業員は防護服を着用し、汚染箇所を中心に作業エリアを養生シートで区切ります。
区分けの際は、汚染の程度に応じて「重度汚染区域」「軽度汚染区域」「清浄区域」の3つに分類するのが一般的です。
また換気システムを設置して、汚染空気が他の区域に流れ込まないよう適切な気圧管理を行う業者もいます。
手順2.汚染低減作業
汚染低減作業では、特殊な洗剤と専用の機材を使用して、死臭の原因となる有機物を徹底的に除去します。
床や壁、天井など、体液が付着した箇所には、酵素系洗剤による分解処理を行い、その後、ペーパーウェス(吸水性に優れたペーパータオル的なもの)などで薬剤と一緒に回収(拭き取り)します。
特に浸透性の高い専用洗剤を使うことで、表面だけでなく、素材の内部に染み込んだ汚れまで確実に除去するのが基本です。
また、原因物にアプローチした薬剤は回収しますので、そのためのトラックマウント(高温給排水機)、除湿機、大型扇風機などの専用機材も活用します。
また、高温給排水機(エクストラクター)やスチームクリーナーなどのプロ仕様の機材を使うことで、通常の清掃では取り除けない微細な汚れまで洗浄できます。
手順3.洗浄作業(清掃・除菌)
洗浄作業(清掃・除菌)では、死臭の原因となる細菌やウイルスを完全に除去します。
まず、医療施設でも使用される除菌剤を室内全体に噴霧し、病原体を死滅させます。
その後、特殊な除菌剤を使用して、目に見えない病原体まで確実に除菌する流れが一般的です。
作業は天井から床に向かって順序よく行い、一切の死角が生じないよう徹底的に行います。
またエアコンのフィルターや換気扇など、普段手の届きにくい場所も分解して清掃・除菌を行うことで、室内の衛生環境を完全に回復できます。
手順4.解体作業(汚染された部位の撤去・防臭処理)
次に、汚染された部位の撤去・防臭処理のために解体作業を行います。
汚染部位の特定では、特殊な検知機器を使用して、臭いが染み込んでいる場所を探知します。
UV照射による蛍光反応や、専用の臭気センサーを使うことで、壁材や床材の深部に潜む汚染箇所を正確に特定できます。
また熱画像カメラを使用して、体液が染み込んだ箇所の温度変化を検出し、汚染の広がりを立体的に把握する業者もあるでしょう。
これにより、表面からは見えない汚染の範囲や程度を科学的に判断し、後続の作業計画を立てることが可能になります。
手順5.除菌作業
除菌作業では、特定された汚染箇所の状態に応じて、最適な対処方法が選択されます。
臭いが深く染み込んだ床材やクロスは完全に撤去し、新しい材料と交換しなければなりません。
また臭いが構造材に染み込んでいる場合には、特殊な防臭コーティング剤を塗布して封じ込めます。
撤去作業の際は、汚染物が飛散しないよう、集塵機を使用しながら慎重に進めます。
また、撤去した材料は専用の密閉容器に収納して適切な方法で処分し、残された部分にはポーラスの開孔作業(一時的な高温化)を行い、ポーラス内部に浸透した原因物の徹底除去を行います。
手順6.消臭作業(オゾン消臭)
消臭作業(オゾン消臭)は、死臭除去の最終段階として実施される重要な工程です。
高濃度のオゾンガスを室内に充満させることで、残留している臭い分子を化学的に分解します。
オゾンは酸化力を持ち、通常の消臭剤では処理できない微細な臭い成分まで完全に除去できます。
作業は完全密閉した状態で行われ、専用の濃度計を使用して適切なオゾン量を維持しなければなりません。
そのため、処理時間は汚染状況に応じて調整され、数時間かけて実施します。
処理後は換気を十分に行い、室内の安全性を確認してから次の工程に移ります。
手順7.原状回復工事(原状回復工事)
原状回復工事では、撤去した部材の交換や、壁紙の張り替えなどを行い、室内を元の状態に戻します。
新しい床材や壁材には防臭・抗菌機能を備えた製品を使用し、臭いの再発を防止するのが基本です。
また必要に応じて換気システムの改修も行い、室内環境の改善を図ります。
4.死臭の特殊清掃を業者に依頼する場合の費用相場
死臭の特殊清掃にかかる費用は、物件の広さや汚染状態によって大きく変動します。
ここでは以下の2つの視点から費用相場を詳しく解説します。
- 間取り別の費用
- 作業別の費用
それぞれ参考にしてください。
ケース1.間取り別の相場
間取り別に見た特殊清掃費用の一般的な相場は以下のとおりです。
間取り | 費用の目安 |
1R〜1K(16㎡〜28㎡) | 130,000円〜280,000円 |
1DK〜3LDK(25㎡〜70㎡) | 300,000円~800,000円 |
4DK〜(71㎡~) | 500,000円~ |
物量過多の部屋(ゴミ屋敷) | 要見積もり |
死臭の特殊清掃は、通常13万円から80万円程度で依頼可能です。
ただし、汚染状態や建物の構造によって費用は変動します。
例えば、1Rの清掃であっても床下まで汚染が及んでいる場合は、追加費用が発生します。
ケース2.作業別の相場
特殊清掃の作業内容別に見た費用相場は、以下のとおりです。
作業内容 | 料金 |
体液や血液の清掃 | 30,000円~50,000円 |
消臭作業(例1K) | 50,000円~10,000円 |
除菌(例1K) | 20,000円~35,000円 |
畳撤去(体液血液付着) | 8,000円~15,000円/枚 |
建具撤去(体液血液付着) | 15,000円~40,000円/箇所 |
オゾン消臭 | 30,000円~50,000円/日 |
死臭の特殊清掃では、複数の作業を組み合わせて行うのが一般的です。
例えば、1Kの物件で基本的な清掃・消臭が必要な場合、消臭処理と除菌を合わせて4万円程度が相場です。
建具や畳の撤去が必要な場合は、それぞれの作業量に応じて追加費用が発生します。
5.死臭の特殊清掃で失敗しないための業者の選び方
死臭の特殊清掃で失敗しないための業者の選び方として、以下の3つが重要です。
- 完全に消臭できるかを確認
- 実績・専門性の高さを確認
- 遺品の分類や整理も可能かを確認
それぞれ参考にしてください。
選び方1.完全に消臭できるかを確認
特殊清掃における死臭の除去は、確実な消臭が求められる繊細な作業です。
業者選びでは、まず完全消臭の実績があるかどうかを確認することが重要です。
具体的には、ホームページから過去の作業事例や、特許の有無などを確認しましょう。
また、作業後の保証やアフターケアの有無も重要なチェックポイントです。
特に「再発時の再作業」などの保証がある業者は、自社の技術に自信があることの表れといえます。
万が一の場合の対応方針が明確な業者を選ぶことで、より安心して依頼できます。
選び方2.実績・専門性の高さを確認
特殊清掃の品質は、業者の実績と専門性に大きく左右されます。
過去の施工実績や、実際の利用者からの口コミを丁寧に確認しましょう。
特に死臭の特殊清掃に特化している業者は、豊富な経験と専門的なノウハウを持っていることが期待できます。
また、特殊清掃士などの専門資格を持つスタッフが在籍しているかどうかも重要な判断材料です。
資格保有者がいる業者は、体系的な知識と技術を備えており、より確実な作業が期待できます。
見積もり時には、資格保有者が実際の作業に携わるかどうかも確認すると良いでしょう。
選び方3.遺品の分類や整理も可能かを確認
死臭の特殊清掃現場では、同時に遺品の整理も必要になることがほとんどです。
そのため、清掃だけでなく、遺品整理や貴重品の発見・保管まで一貫して対応できる業者を選ぶことがおすすめです。
複数の業者に依頼すると、連絡調整や作業の引き継ぎなどで手間がかかり、トラブルのリスクも高まります。
清掃と整理を一括で依頼することで、作業の効率化が図れるだけでなく、大切な遺品の取り扱いに関する安心感も得られます。
また、一括で依頼することにより、トータルでのコスト削減につながる可能性もあるでしょう。
6.死臭の特殊清掃は専門の業者に依頼しましょう
死臭の特殊清掃は、専門知識と経験、そして適切な設備がなければ完全な除去は困難です。
素人による不適切な処理は、かえって臭いを広げたり、建物に損傷を与えたりするリスクがあります。
特殊清掃の専門業者は、現場の状況に応じて、汚染物質の除去からオゾン消臭、さらには原状回復工事まで一貫した対応が可能です。
業者選びでは、実績や専門性の高さはもちろん、見積もりの透明性や遺品の分類や整理が可能かどうかも重要な判断ポイントです。
信頼できる業者に依頼することで、確実な死臭除去と適切な現場復旧が実現できます。
死臭がある場合は決して自己処理せず、専門業者への依頼を強く推奨します。