特殊清掃業者とは?遺品整理やハウスクリーニングとの違いを紹介
最近、テレビや新聞で特殊清掃業者の活動が取り上げられることが増えてきました。
しかし、以下のような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
- 「特殊清掃業者って何をする人たちなんだろう?」
- 「一般の清掃業者とどう違うの?」
- 「どのような時に依頼するものなの?」
近年の高齢化や単身世帯の増加に伴い、孤独死の問題が社会的な課題になっています。
そのような状況下で、特殊清掃業者の役割は、ますます重要性を増しているのも事実です。
本記事では、特殊清掃業者の具体的な仕事内容から、なぜ今注目されているのか、そして私たちの社会でどのような役割を果たしているのかまで詳しく解説します。
特殊清掃について知りたい方、将来的に依頼する可能性がある方は、ぜひ最後までご一読ください。
1.特殊清掃業者とは?
特殊清掃業者は、一般的な清掃会社では対応できない特殊な現場を専門的に清掃する業者です。
主に孤独死や事故、事件現場などで、亡くなった方の体液や血液の除去、死臭の消臭作業、腐敗物の処理などを行います。
また、遺体発見までに時間が経過してしまったケースでは、床や壁に染み込んだ体液を完全に除去し、建物の原状回復も実施可能です。
必要に応じて、事故や事件現場の処理だけでなく、ゴミ屋敷の清掃や害虫・害獣の駆除など、専門的な技術を要する清掃全般も手がけています。
以上のように特殊清掃業者は、一般の清掃業者では対応できない特殊な状況下での清掃を、専門的な知識と技術、そして細やかな配慮をもって行う、社会になくてはならない存在です。
2.特殊清掃と遺品整理・ハウスクリーニングの違い
特殊清掃業者・遺品整理・ハウスクリーニングは一見似ているようで、実は大きく異なるサービスです。
以下の比較表で、それぞれの特徴を確認してみましょう。
サービス内容 | 特殊清掃業者 | 遺品整理 | ハウスクリーニング |
特殊な汚れの除去 | ○ | × | × |
遺品の整理 | ○ | ○ | × |
消臭・除菌 | ○ | △ | △ |
原状回復 | ○ | × | × |
一般清掃 | ○ | △ | ○ |
以下では、違いをそれぞれ解説します。
遺品整理との違い
特殊清掃業者と遺品整理の最も大きな違いは、特殊清掃の実施の可否にあります。
遺品整理は故人の遺品を整理・分類し、必要なものと不要なものを仕分けることに特化したサービスです。
一方、特殊清掃業者は遺品整理に加えて、特殊な清掃技術を用いて現場の除菌や消臭を行います。
例えば、孤独死があった部屋の場合は以下の通りです。
- 遺品整理のみに依頼→残存する異臭や染みは除去できない
- 特殊清掃業者に依頼→遺品整理から消臭・除菌まで一貫して対応可能
上記のように、特殊清掃の有無でどちらを選ぶべきか決めるとよいでしょう。
ハウスクリーニングとの違い
特殊清掃業者とハウスクリーニングの決定的な違いは、清掃の目的と専門性です。
ハウスクリーニングは日常的な汚れの除去や美観の維持が主な目的ですが、特殊清掃業者は事故や事件現場の原状回復を目指します。
一般的な掃除が必要な場合はハウスクリーニング、特殊な汚染物質の除去が必要な場合は特殊清掃業者と考えるとわかりやすいです。
特殊清掃業者は専門的な技術と装備を持ち、通常のクリーニングでは対応できない深刻な汚染にも対処できます。
事故物件や重度の汚染がある場合は、必ず特殊清掃業者に依頼することが必要です。
3.特殊清掃業者が行う5つのサービス
特殊清掃業者は、一般的な清掃では対応できない特殊な状況で、専門的な知識と技術を持って対応します。
主なサービスは以下の5つです。
- 消臭と除菌による衛生管理
- 汚染物の安全な除去
- 遺品など残留物の適切な処理
- 害虫や害獣の駆除
- 物件の原状回復
以上のサービスは、状況に応じて単独または組み合わせて提供されます。
それでは、具体的な内容を見ていきましょう。
サービス1.消臭と除菌
特殊清掃業者が行う消臭と除菌は、一般的な清掃とは全く異なるレベルの専門的な作業です。
特に孤独死現場では、遺体が数日から数週間放置されることで、強烈な死臭が壁や床に深く染み込んでしまいます。
この死臭は一般的な消臭剤では対応できず、特殊な薬剤と専門的な技術が必要です。
特殊清掃業者は、まず現場の除菌作業をして作業員の安全を確保します。
その後、原因物を撤去したあとに除菌洗浄をして、現場の安全を確保するのです。
最後に、消臭作業を行い、臭いを完全に消します。
原則、原因物を完全除去が必要なので、臭気源である壁や床の撤去を提案することが多いです。
しかし、予算の関係で壁や床を撤去せずに行う、封孔処理という封じ込め作業で対応する場合もあります。
この作業は人体に有害な物質を扱うため、専門の防護服や装備を着用して実施するのが一般的です。
サービス2.汚染物の除去
特殊清掃業者による汚染物の除去は、人体に有害な物質を安全に取り除く専門的な作業です。
対象となる汚染物は多岐にわたり、主に以下の3種類に分類されます。
種類 | 例 |
生物性汚染 | 体液や血液、含まれるバクテリアやウイルス |
化学性汚染 | 有害化学物質、揮発性有機化合物、薬品類 |
人為的汚染 | 大量の埃、汚物、腐敗物(※居住者起因) |
上記の汚染物は、それぞれ適切な除去方法と処理方法が定められています。
特殊清掃業者は、法律や条例に従いながら、専門的な知識と技術を用いて安全に除去作業を行うのです。
特に生物性汚染の場合は、二次感染を防ぐため、厳重な防護措置のもとで作業が進められます。
サービス3.遺品など残留物の処理
特殊清掃業者による残留物の処理は、単なる片付けとは異なる専門的なサービスです。
残留物には、故人の遺品、日用品、書類、家具などさまざまなものが含まれます。
遺品や残留物の処理は以下の手順です。
- 貴重品、思い出の品、処分品の仕分け
- 処理方法の相談と承認
- 法律や条例に基づいた廃棄処分
特に大切なのは、遺品の中から貴重品(現金、通帳、印鑑、宝飾品など)を確実に見つけ出し、遺族に返却することです。
また、特殊清掃業者は遺族の心情に配慮しながら、思い出の品の選別もサポートします。
その他の不用品は、産業廃棄物処理法などの関連法規にしたがって適切に処分するのでご安心ください。
サービス4.害虫や害獣の除去
特殊清掃現場では、しばしば害虫や害獣が発生するため、それらの除去を行います。
孤独死現場では、ハエ・ウジムシ・ゴキブリなどの害虫も現れるので、それらの駆除も行うのです。
特殊清掃業者は以下のような専門的な対策を行います。
- 専用の殺虫剤による駆除する
- 害虫の繁殖源の特定と除去する
- 再発防止のための予防処置する
上記の作業は、単なる害虫駆除だけでなく、建物の構造体に潜む害虫の完全な除去まで行います。
また、ネズミなどの害獣が発生している場合は、その生息経路を特定し、侵入口を封鎖する作業も必要です。
サービス5.原状回復
特殊清掃業者による原状回復は、物件を再使用可能な状態に戻す最終段階の作業です。
特に賃貸物件の場合、契約上の義務として必要不可欠なサービスとなります。
原状回復作業は以下の工程です。
- 壁紙や床材の張り替える
- 染み込んだ臭いの完全除去する
- 建材の補修や交換する
- 室内の除菌と衛生処理する
特殊清掃業者は、単なる見た目の回復だけでなく、衛生面や安全面にも配慮した本格的な原状回復を行います。
特に、体液が染み込んだ建材の交換や、悪臭の元となる部分の特定と処理など、専門的な知識と技術が必要な作業も実施するのです。
4.特殊清掃業者が注目される2つの理由
特殊清掃業者が社会で重要な役割を担っている背景には、以下の2つの大きな理由があります。
- 孤独死の増加による需要の高まり
- 現代社会特有の複雑な社会問題の存在
以上の問題に対して、特殊清掃業者は専門的な知識と技術を持って対応することが求められているのです。
理由1.孤独死が増加している
近年、孤独死の件数は急激に増加傾向にあります。
「第8回孤独死原状レポート」によると、わずか1年余りで約2,000人も増加していることが明らかです。
項目 | 第8回 | 第7回 | 変化 |
総数 | 8,695人 | 6,727人 | +1,968人 |
男性比率 | 83.3% | 83.2% | +0.1pt |
女性比率 | 16.7% | 16.8% | -0.1pt |
死亡時平均年齢(全体) | 61.9歳 | 61.9歳 | 変化なし |
死亡時平均年齢(男性) | 62.5歳 | 62.1歳 | +0.4歳 |
死亡時平均年齢(女性) | 61.4歳 | 61.2歳 | +0.2歳 |
※第7回は2022年11月、第8回は2024年1月
特に注目すべき点は、死亡時の平均年齢が60代前半と、必ずしも高齢者だけの問題ではないことです。
以上のような状況下で、特殊清掃業者の役割は、残された現場を適切に処理し、次の入居者が安心して生活できる環境を整えることにあります。
理由2.さまざまな社会問題がある
特殊清掃が必要となるケースは、孤独死に限りません。
現代社会では、経済的な困窮による自殺や犯罪に巻き込まれるケースなど、さまざまな社会問題が存在します。
特に都市部では、地域コミュニティの希薄化や核家族化の進行により、一人暮らしの人口が増加傾向です。
以上のような状況下で、特殊清掃業者には次のような場面での対応が求められています。
- 経済的困窮による自殺現場の清掃
- 事件・事故現場の処理
- ゴミ屋敷化した住居の清掃
- 介護放棄による不衛生な環境の改善
特殊清掃業者は、この深刻な社会問題に直接向き合い、専門的な技術と知識を活かして解決に貢献する重要な役割を担っているのです。
5.特殊清掃は自分でもできる?
特殊清掃を自分で行うことは、決しておすすめできません。
費用を抑えたい気持ちは理解できますが、安全性や作業の正確性を考えると、特殊清掃業者に依頼することが重要です。
孤独死現場では、腐敗によって発生する有害物質や病原菌が存在します。
これらに素手で触れることは、深刻な健康被害を引き起こしかねません。
また、業者は適切な防護服や専用の洗剤、特殊な機材を使用し、安全かつ確実に清掃します。
素人が一般の掃除用具で対応する場合、完全な除菌や消臭は難しく、むしろ二次被害を引き起こすリスクが高いです。
もし大切な方が孤独死や事故、事件に巻き込まれて亡くなられた場合は、必ず特殊清掃業者に依頼することをおすすめします。
6.特殊清掃業者は専門的なだれかがやらなければいけない仕事です
特殊清掃業者が行う事故現場や死亡現場の処理には、専門的な知識と経験、そして適切な設備や薬剤が必要不可欠です。
特に大切なのは、特殊清掃業者が持つ3つの専門性になります。
- 人体に有害な物質を適切に処理する専門知識
- 特殊な機材や薬剤を使う技術力
- 遺族や関係者への心理的配慮ができる対人スキル
また、産業廃棄物の処理や感染性廃棄物の取り扱いには、専門的な資格や許可が必要です。
素人が安易に処理を試みることは、法律違反になるリスクがあるだけでなく、二次被害を引き起こす可能性もあります。
このように、特殊清掃は専門業者にしかできない仕事であり、私たちの社会を支える重要な職業の1つとして、今後もその需要は増加していくでしょう。